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「現在のAIブームは単一技術の応用で終わっている」、業種別ソリューションも展開

ファーウェイ、クラウド型AI基盤「Enterprise Intelligence」発表

2017年09月12日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 中国のファーウェイ(Huawei)は9月5日、上海で開催された法人事業の年次イベント「HUAWEI CONNECT 2017」において、法人向け事業における人工知能(AI)戦略を発表した。クラウドを基盤とするAIプラットフォーム「Enterprise Intelligence」を提供することにより、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するという。

「HUAWEI CONNECT 2017」基調講演に登壇した、ファーウェイ クラウド事業ユニット及びITプロダクトライン担当プレジデントのツェン・イェライ(Zheng Yelai)氏

各種AI技術を単一クラウド基盤で展開、業種アプリも

 Enterprise Intelligence(EI)は、法人市場向けのビジネスAIサービスだ。具体的には、同社が長年培ってきた画像認識などのAI技術/ソリューションを、クラウドサービスの形で提供する。ファーウェイでクラウド事業ユニット及びITプロダクトライン担当プレジデントを務めるツェン・イェライ氏は、「AI技術のプラットフォーム化」だと説明した。

 ファーウェイでは社内にAI専任の開発チームを持ち、動画の画像認識など、すでに実用化されている技術も多い。中国国内では公安目的で監視カメラが設置されており、子どもの誘拐を早期解決するなど、AI技術の活用による具体的なメリットも出ているという。

 今回発表されたEIは、これまで同社がバラバラに提供してきたAI技術や分析技術を単一のプラットフォーム上にまとめたサービスである。具体的には、基本的なプラットフォームサービス(機械学習、ディープラーニング、グラフ分析などの機能を持つ技術プラットフォームとAIトレーニングやインデックスのプラットフォーム)、汎用のAIサービス(画像認識、音声認識、自然言語の3種類のAPIが発表されている)、そしてユーザーの固有の状況に対応するシナリオソリューション、という3要素で構成される。

 ここで言う「固有の状況」ソリューションとは、業種ごとあるいは顧客企業ごとのニーズに合わせて、ファーウェイやサードパーティ(パートナー)が開発するもので、たとえば物流支援、リスク管理、レコメンドなどのシナリオが考えられるという。プラットフォームや要素技術だけでなく、具体的なソリューションとして提供することで「顧客はすぐに価値を得られる」と、ファーウェイではそのメリットを説明している。

Huaweiの「Huawei Cloud Enterprise Intelligence(EI)」概念図

 同日のプレスイベントでは、「画像認識」「予想メンテナンスに利用できる装置(デバイス)認識」「手書き数字を認識するOCR」という3種類のEIサービスが紹介された。このうちOCRは、手書き数字を「97.37%」の精度で認識可能だという。

会場で行われていたAI技術展示。画像認識では2万3000種類もの自動タグ付けができる。「花」「石」など具体的なタグだけでなく「幸せ(happy)」など抽象的なタグも付いている
低解像度の古い画像から高解像度画像を生成する「Super Resolution」の技術デモも披露していた

 ツェン氏は、デジタルトランスフォーメーションの流れからAIの重要性を説明した。「クラウドコンピューティングをベースとしたデジタルトランスフォーメーションは価値を生み出す段階に入った」(ツェン氏)。AIはその次のステップとなり、企業にさらなる価値をもたらすと見ている。

 一方で、現在のAIトレンドについては「1種類のAIテクニックを応用するにとどまっている」と分析、画像認識だけではなく、他の技術を組み合わせることでより複雑なシナリオに対応でき、より大きなメリットを得られるとした。ここにおいてはクラウドという基盤が最適な組み合わせとなる。

 ツェン氏は「サプライチェーンなど、さまざまなシナリオでAIが活用されるだろう」と述べる。サプライチェーンの場合、出荷のフォーキャストなどに基づいてコスト削減や効率改善を図ることができる。また、スマートシティにおいて交通量を予測するとともに、最適な移動ルートの提案のような新しいサービスの可能性も考えられるという。実際、ファーウェイ自身もサプライチェーンでAI/EIを活用しており、伝票処理の自動化において処理時間を大幅に短縮するとともに、出荷の精度が30%改善するなど全体の最適化も図っていると報告した。

ソーシャルグラフ解析エンジンのデモ展示。ハイパースケールの並列クエリ処理によって、ソーシャルメディアから瞬時に関係分析を行うことができる。この技術は金融詐欺対策でも利用されているという

公開後4日間で220万件の問い合わせを受けた「保険アドバイザーボット」

 基調講演では、すでにファーウェイのAI技術を採用している顧客事例も紹介された。その1社が、保険業のCPIC(China Pacific Insurance Company)だ。CPICは、保険金請求処理にファーウェイのOCR技術を採用している。これまでは、被保険者が作成した医療費申請の書類を人の目でチェックしていたが、ここにOCRを適用することで、自動化と処理時間の短縮を図っているという。

 CPICのCDO(最高デジタル責任者)、ヤン・シャオリン(Yang Xiaoling)氏は、「処理時間を最低でも50%以上短縮できる。ファーウェイはすばらしいソリューションを提供してくれた」と語った。CPICとファーウェイは2014年秋に戦略的提携を結んでいるが、今回のHUAWEI Connect会期中にはさらに提携を拡大する覚書を締結している。

 CPICは、2016年からデジタルトランスフォーメーションを進めているところだ。ヤン氏は「フィンテックは従来型の金融企業が(中国で多いネット金融や異業種からの参入から)身を守るための技術。これを利用して顧客体験と運用効率を改善する」と説明する。

 同社のデジタルトランスフォーメーションの例として、ヤン氏は9月1日にローンチしたばかりの保険アドバイザーボット「Alpha InsurAdvisor」を紹介した。これは家庭のリスク防止指数を割り出して保険金額を試算してくれるもので、ユーザーはQRコードを利用してアクセスし、5分ほどで回答できる質問に答えるだけでよい。その手軽さもあり、「ローンチから4日目で220万件以上のアクセスがあった。営業コストはゼロだ」とヤン氏は胸を張った。

デモ展示エリアでは公安、スマートシティの展示が目立ったが、こちらは地下鉄利用者の流れをリアルタイム分析し、オペレーションに活用する例を提案していた。混雑具合に応じて、鉄道利用者に混雑していない通路を教えたり、地下鉄の運行調整を行ったりするアイデアが考えられるという

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