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まつもとあつしの「メディア維新を行く」第60回

中国・配信・CG――アニメビジネスの最新事情を数土直志氏に訊く

他国のカネでアニメを作るとき、何が起きるのか?

2017年08月21日 17時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史

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海外資本注入で登場キャラが国際色豊かに!?

―― ただ、日本でもソーシャルゲーム企業などがアニメ製作に乗り出す例は増えており、そちらはかなりのクオリティーだったりします。何が異なるのでしょう?

数土 ソーシャルゲーム企業の場合は、制作現場とのコミュニケーションが取れていますね。Cygamesさんなどは、アニメを手がけていた人材を入れたりもします。制作にはおカネだけでなく、時間も必要なんだという相互理解を彼らが生みだしている点は大きいと思いますね。

―― これまでの経験を踏まえて、今後中国企業もそのような動きを取っていくことになるでしょうか?

数土 それはまだわかりません。

―― 文化の違いというのはかなり大きいのかもしれませんね。そういう意味では、おカネの話だけでなく、ストーリーについても「中国風味」になることに対して、ネットでは揶揄したり、懸念の声がよく上がります。

今年のアヌシー映画祭で作品の上映が取り下げられた『Have a Nice Day』。中国政府による圧力があったのではともされる。


数土 うーん……僕は少なくとも日本で作る限りにおいてはあまり影響はないと思うんですよ。日本人が作るものに対して、「共産思想を入れろ」みたいな話はないですね。もちろん中国でも受け入れられるように、中国人のキャラクターを入れて欲しいといった要望はあると思いますが。暴力や性的な表現はもちろん規制がありますが、それは程度や方向性の差はあれ、欧米向けでも多かれ少なかれ存在します。

―― 確かに。日本のアニメだけでなく、ハリウッド映画にも中国資本は入っていますが、思想の押しつけを感じることはありません。我々見る側のバイアスというか、色眼鏡で見てしまっているところはあるかもしれませんね。

数土 世界市場を狙うのであれば、中国だけでなく、それこそ「ユーリ!!! on ICE」のように様々な国のキャラクターが活躍することが重要になってきます。ユーリでは、スケート自体は盛んではないタイ人の選手が登場しますが、これは日本のアニメがタイで人気ということも踏まえての設定ではないでしょうか。

「ユーリ!!! on ICE」では世界各国のスケート選手が競い合う。


―― 2000年代からずっと指摘されていた日本のアニメの海外展開を、企画やストーリーで支えていく取り組みが実を結びつつあり、中国市場や中国資本を踏まえた作品では、他の国や地域への展開と同様の試みが行なわれている、という理解が正しいと言えそうです。言い換えれば、中国など海外の資金が入ってくることで、作品のバリエーションが広がるという言い方もできますか?

数土 実際、興行的な成功も伴いながらとなると、なかなか難しい面もあると思います。先日、NBCユニバーサルがクランチロールと共同製作に乗り出すというリリースがありましたが、「グローバルによりアクセスしやすいオリジナル作品を作る」というのが、その狙いだとありました。

 クランチロールのような外資企業からすれば、「こうすれば世界で売れる作品になるのに」という風に見えているかもしれないのですが、そんな簡単なものでもないぞ、と思うんです。それは日本企業が、時には海外の企業も巻き込みながら、様々なチャレンジをしてきて、沢山の挫折もあったわけですから。海外で受ける作品にしてしまうと、今度は日本で受け入れられなくなる。逆も然り。両方を狙うとどちらにも受けなかったりもする。ずっとその繰り返しでした。

―― 「RWBY」の地上波放送も始まりましたが、まさにそういう意味でのハイブリッドな作品です。キャラクターやアクションは日本のアニメの影響をものすごく感じますが、ドラマパートは完全にアメリカの学園ものになっています。

数土 典型的なスクールカーストが取り込まれた世界観ですからね。簡単ではないものの、クランチロールのような配信大手には期待している部分もあって、彼らは「誰が何を見ているか」というデータをしっかりと持っています。それを材料にハイブリッドな企画を生みだしていく可能性はあると思っているんです。

 よく「日本のアニメがほぼ同時に世界で見られて人気となる」という語られ方がされるのですが、人気となる作品を見るとまったく日本と同じ作品でなくて、例えば北米では「ワンパンマン」や「東京喰種」がすごく受けている。ちゃんとポイントがおさえられているからなんです。

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