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”ヒューマン”が差別化要素――Nokiaブランドで携帯電話を手がけるHMD Globalに聞く

2017年05月27日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII編集部

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 HMD Global――一般のスマホユーザーにはなじみのない社名かもしれないが、HMD Globalが手がける携帯電話ブランドは誰もが知っているはずだ。かつて携帯電話業界を独占した「Nokia」だ。

 Nokiaは2016年、携帯電話市場で再度展開するに当たってHMD Globalと独占契約を結び、Nokiaブランドでの携帯電話を開発・製造・販売を任せた。数あるAndroidメーカーの中で、どのようにして差別化を測るのか。HMD Globalでグローバルマーケティングディレクターを務めるAnastasia Orkina氏に聞いた。

HMD GlobalのAnastasia Orkina氏。HMD GlobalはNokiaのOBがスタッフ内に多く含まれている

中国でのNokia 6の購入者は若者が中心
Nokia端末を使った経験はなくても、存在は知っている

――Nokiaブランドでの携帯電話の展開で、Nokiaと提携した。

Orkina氏(以下、同) Nokiaブランドでの携帯電話の設計、作成、マーケティング、ディストリビューションするライセンスを獲得した。Nokiaのチームと密に協業して、Nokiaのブランドと一貫性のあるものを作っていく。

――MWCでは「Nokia 5」「Nokia 6」「Nokia 3」を発表した。このうち、Nokia 6は中国で先行発売していたもののグローバルローンチとなるが、Nokia 6の中国市場での反応は? 完売とのことだが、販売台数は?

 非常に良かった。レビューも顧客満足度も高い。台数は非公開だが、発売後23秒で完売した。購入した人のうち74%が24歳以下。つまり4人中3人がかつてのNokia時代をよく知らない層ということになる。これは、中国でのマーケティングがうまくいったからと思っている。

MWC中に発表された「Nokia 5」。HD解像度の5.2型液晶にSnapdragon 430と典型的なミドルクラス。価格は約189ユーロ

――今のスマートフォン市場は高価なフラッグシップ端末があり、それに手が届かなければミッドレンジを、あるいはローエンドを買うという流れになっている。発表した端末はどれもミッドレンジだが、実際にフォーカスするのは?

 我々はミッドレンジからスタートしたかった。イノベーションは、人々が持ちたいと思う機能に着目しており、実際に持つことができるという価格帯が重要だ。当面はミッドレンジにフォーカスしていく。ユーザー層としては、Nokiaの体験に価値を感じてくれる現実的なミレニアルを狙っている。

――どうやってNokiaのスマートフォンを、Nokiaを知らない人に訴求していく?

 Nokiaが活発だった市場では、Nokiaの端末を持ったことがなくても知っているという若い人は実に多い。我々自身も驚くほどだ。親が持っていたなどで、Nokiaというロゴ、あるいはNokia Tune(Nokia独自の着信音)を知っている。全体として、Nokiaに対して肯定的な好奇心を持ってもらっている。これを土台にする。

 MWCでは古いSnakeゲームをFacebook Messengerでローンチした。公開後3日もしないうちに110万人以上のユニークユーザーを獲得した。Nokiaを知らない層に拡大できたといえる。

――MWCの端末発表会で、HMD GlobalのCEOは、上位の携帯電話メーカーの仲間入りを目指すと語った。どのような戦略をとるのか? スマートフォンのシェア争いでは、大規模なマーケティングが欠かせなくなっているが。

 携帯電話は人が持つものであり、人や人間性を感じるブランドが必要だ。Nokiaは人に着目しており、命を吹き込む。つまり、Nokiaはヒューマンブランドーーここは、他のブランドとの違いだ。

 MWCの会期中に”Unite”というキャンペーンを開始した。(当時の)Nokiaは”Connecting People”をスローガンとしていたが、中心にあるのは人で、人々を結びつける(Unite)ようなストーリーの一部となりたい。誰もがコネクテッドの時代だが、文脈はそれぞれ異なる。

 マーケティングでは、ソーシャル主導のユーザー生成コンテンツを利用してエンゲージを強めていく。一方的にメッセージを送りつけるのではなく、コミュニティーの一部として関わっていきたい。

――OSにはカスタマイズをしていないAndroidを採用したが、その理由は? 他のOSを採用する計画は?

 ”バニラ”なAndroidにする理由は、ユーザーに安全を提供するため。最新のAndroidにすぐにアップデートできる。Androidにフォーカスしており、他のOSを使う計画はない。

スペック競争ではなく、笑顔をもたらす端末を

――「Nokia 3310」のリメイクも話題を呼んだ。開発に至った背景や狙いは?

 実にシンプルで、Nokiaにはたくさんの財産がある。今でもeBayでNokiaの端末は売買されている。Nokiaデバイスを手がけるにあたって、HMD Global内でコンシューマーは何を望んでいるのかを考えた。フィーチャーフォン事業もあり、Nokiaの財産への”トリビュート”としてNokia 3310を作成することにした。

Nokiaの名機「Nokia 3310」を復活させたこともMWCで話題になった。画面がカラーになり、バッテリー持ちもよくなったが、機能的には昔ながらのフィーチャーフォンそのもの。Nokiaへのノスタルジーもマーケティングに活かす

 もう一つの目論見が、携帯電話を手にする人に笑顔を取り戻すこと。今のスマートフォンはスペックの競争で、画面の大きさ、解像度、カメラのピクセル、サイズで戦っている。Nokia 3310はそんなものから離れて、手の延長のように持ってもらい、人々に微笑みをもたらす電話になったと信じている。

 オリジナルのNokia 3310のデザインには笑顔が入っている――画面を縁取る曲線のラインとボタンでスマイリーを表している。このデザイン哲学を再現しつつ、モダンで最高の品質のものを、というのが目標だった。色や形でモダンさを表現し、通話時間やバッテリー持続時間を強化した。一目でNokiaとわかるデザインで、最高のものができたと思っている。

 20年近く前、最初にNokia 3310が発売された時、(携帯電話は世界的な普及期にあり、携帯電話だから成立し得たような)人生を変えるようなストーリーが世界のあちこちであった。主役は人間。これを取り戻したい。

 ビジネスの面から見ると、HMD GlobalはJavaベースのフィーチャーフォン事業も展開しており、Nokia 3310はフィーチャーフォンのフラッグシップになる。

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