AMI BIOS 7A32v13でメモリーも安定方向に
2017年4月11日にリリースされたBIOSのバージョン7A32v13は、Ryzen 5に対応だけでなく、メモリーの相性問題も緩和されたようだ。トラブルが生じた時の対策とアップデートが早いことは高く評価したい。
バージョン1.2では、Corsair製メモリー「Vengeance LPX CMK16GX4M2B3000C15」がDRAM Frequency 2133MHzでのみ起動可能だったが、バージョン7A32v13では2933MHzで起動するようになったほか、A-XMPプロファイルを読み込んだ場合も2933MHzで起動できた。
これはAGESA(AMD Generic Encapsulated Software Architecture)がアップデートされた影響もあると思われる。AM4はマザーボードベンダー側がすべて関与できるわけではなく、カスタムできる機能が制限されている。それが部分的にアンロックされたり、関与できない部分が修正されたりした場合、Updated AGESAといった表記がされるようだ(このあたり、あまりAMDから開示されておらず、不明な点が多い)。
メモリーについてMSIに確認したところ、対応リストへの掲載ルールに関する情報を得られた。下記をクリアしたものだけが掲載されているとのことだ。パーツ選びの参考にしてほしい。
- Memtestによる動作検証を、シングルDIMM構成から2DIMM、4DIMMで検証
- BIOS/OSテストに関しては、起動やシステムの安定性の検証
もうひとつ、USB 3.0周り。不安定である情報もあれば、そうでもないとの情報もあり、環境依存度の高い案件だと思われる。とはいえ、不安要素ではあるので、X370 GAMING PRO CARBONのUSB 3.0/3.1ポートをテストしてみた。
テストは外付けSSD(Crucial MX100)から内蔵SSD(Radeon R7 SSD)へのデータコピー、内蔵SSDから外付けSSDへのデータコピーをそれぞれ3セット。データは400枚のRAWファイル(1ファイル約85MB)で、BIOSバージョンは7A32v13。
結果としては、全USB 3.0/3.1ポートともトラブルは生じることはなく、転送速度についても問題なく、外付けSSDから内蔵SSDへのコピー時には200~300MB/sと特定のポート以外で安定していた。
特定のポートとはLANポート下部にある「VR Boost」対象のUSB 3.0ポート×2だ。不安定というわけではなく、Read/Writeとも35~37MB/sに張り付く傾向で、またデータ転送を開始してから3~5秒はデータ転送が開始されないとクセのようなものを確認できた。
「VR Boost」対象のポートは、MSIによると“VRに最適なクリーンで強い信号をUSBポートに送るUSB信号用チップ”と“信号損失を軽減し、違和感のないVR体験をサポートするUSBポート”とのことで、速度よりも安定を取ったリピーターを介したポートになる。VRでは必然的にケーブルが長くなり信号が弱くなるため、それに注力したポートだ。
転送速度はそれほど必要としないが、ケーブルが長くなってしまっているUSB機器を接続する用にもなるだろう。ただ転送開始までの待ち時間の長さが気になったので、キーボードやUSB DACなどを取り付けてみたが、問題なく使用できた。USB DACを遠くに設置したいときに思い出してみよう。
末永く使える実売価格2万4000円前後
X370 GAMING PRO CARBONをチェックしてきたが、ソツのないマザーボードに仕上がっており、配慮すべき部分は「VR Boost」対象のUSB 3.0ポート×2(不安定というわけではなく独特のクセが見られた程度)と扱いやすく、ベテランだけでなく、はじめての自作PCである人にも向いている。
Ryzenでは、メモリーの相性問題とUSB 3.0周りにおける不都合が散見されているが、これらの不都合が出なかったX370 GAMING PRO CARBONは、安定したRyzenでのゲーミング環境を構築できるだろう。これからパーツ選定に入るのであれば、MSI X370 GAMING PRO CARBONをチェックしてもらいたい。