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第3回「Player Training Session」開催

LoLのプロゲーマーとして足りないものは?「現状理解」と「理想像を描くこと」

2017年02月26日 10時00分更新

 世界でもっとも成功しているPCゲームといっても過言ではない「League of Legends(以下LoL)」。日本法人の合同会社ライアットゲームズにより、国内でも正式にサービスが提供されており、公式のリーグ戦「League of Ledgend Japan League(LJL)」の戦いが繰り広げられている真っ最中だ。

League of Legends Japan League (c) 2016 Riot Games. All Rights Reserved.

 LoLは競技性が高く、昨今業界のキーワードになっている「eスポーツ」の代表的タイトルだ。日本でもLJLに参戦するために、プロチームが結成されている。

 ゲームにおける“プロ”という存在自体は、これまで日本では馴染みがなかった。野球やサッカーの選手であれば手本となるプロも存在し、学生時代の部活動などを通じて、その組織に対してどのように自分が関わっていくのか、どのように振る舞えばいいのか、考えて学ぶ機会も多かっただろう。

 まだ成長段階の“プロゲーマー”という分野には、こういった機会がなかった。そこで、合同会社ライアットゲームズは、ゲームメーカー自らが選手たちに学んでもらう場を設けてきた。

 公式リーグ戦のインターバル中となる2月25日、今回で3回目となる「Player Training Session」が都内某所で行なわれた。

7th heaven、DetonatioN FocusMe、Rampage、Rascal Jester、SCARZ、Unsold Stuff Gamingが参加

 第1回には「プロ意識」についてプロレスラーの蝶野正洋氏をスピーカーに迎えたセッションなどが、第2回には「相互フィードバックによる切磋琢磨」をテーマにワークショップが行なわれた。そして、第3回は「共通目標へのチームの導き方」だ。

 LoLのゲーム内容については割愛するが、チームを組んで戦うのが基本だ。ほかのスポーツと同じで、選手だけでなくマネージャーやオーナーなど関わる人間も多い。つまり、個人スポーツではないので、チーム全体の関係性がそのままチーム力に影響してくる。これは、会社組織でも同じことが言えるだろう。

 合同会社ライアットゲームズのディレクター 齋藤亮介氏は、先日のIWCA All-STAR(各国で選ばれた代表選手による国別対抗戦)での日本チームの活躍が、Riot Games本社でも話題になったことなどを例にあげ、着実に成長している一方で、現状のLJLに足りない部分が浮き彫りになっていると述べた。

 日本のチームが世界で活躍するための課題は、eスポーツの歴史(の浅さ)からくるコーチ・スタッフの充実度と、言語・文化を超えたチームワークにあるという。特に後者は、ラグビー日本代表のように国籍混合のチームであっても(LJLも韓国人選手を擁するチームが多い)、目標を目指してチームの力を結集すれば好成績を残すことができるはずだ。

 今回は「チームの現状理解」と「理想のチームを描く」ことを目標に、アメリカンフットボールの日本代表コーチを務めた経験のある、松場俊夫氏らを講師に迎えて7時間以上にも及ぶワークショップが行なわれた。

 同氏はアメフトのプロチームのコーチを15年間、2007年ワールドカップ日本代表チームのコーチで銀メダルを獲得した経験もあり、企業向けにもビジネスでのチームマネジメントについてセミナーも行なっている。

 まずは、「フラフープ」を使ったミニゲームを行なった。チーム全員が指1本だけでフラフープを持ち上げて運び、ひとりでも指が離れたらやり直しという内容で、一見簡単そうだが全員の意識を合わせる必要があるので難易度は高い。

 どのチームも初挑戦ではまったくできず、3分間の作戦タイムが設けられた。その時間をとにかく練習に費やすチームもいれば、手で掴んでタイミングを共有することだけに時間を割いたチームなどさまざまだったが、結果を見ると後者のような話し合うチームが成功していた。

 このゲームを通じて認識させたかったことは、チームとして強くなるために必要な、「共通目的」と「協働意思」、「コミュニケーション」の3点だ。アメリカの経営学者、チェスター・バーナードの組織論をご存じの方ならピンとくるかもしれない。

 共通目的とは、「チームの目標は?」といった内容をチーム全体で共有できているのか、ということ。サッカー元日本代表監督、岡田武史氏は、代表選手を選考するにあたって本気でベスト4を目指している選手を優先したことを例にあげ、いちばん大事なことは全員が本気で目標を目指すことにあるのだという。

 協働意思は、お互いに協力する意思をもっていること。チームメンバー同士が「チームに対してどのように貢献しているか。モチベーションをどこにもっているか?」を認識し合う必要がある。ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ監督も、すべての選手のことを深く知ることが、チームづくりをするうえで欠かせない、と過去に述べている。

 円滑なコミュニケーションも必要だ。得手不得手があり、話し方もひとそれぞれで、発言力がある人の意見が優先されたり、黙っていてもものごとが進むようでは決して強いチームにはなれない。青山学院大学のマラソンチーム、原晋監督は、学年に関わらず「その意識は低すぎる」といった議論ができる場をつくることに時間を割いたとのこと。

 松場氏による全体講義のあとはチームごとに分かれて、インタビューや他己紹介でチームメンバーの考えを共有する、といった上記の3点を理解するためのワークショップが続けられた。

 各チームのワークショップを見学してみたが、チームによって雰囲気がまったく異なる。現在リーグ戦で上位にいるチームと下位のチームでは、発言の量と質、そして“熱量”に差があったのも事実だ。予定された休憩時間もとらずに、与えられた課題に対してひたすら取り組んでいたチームもいた一方で、時間を割かれることに不満を漏らしている選手もいた。ゲームの技量だけでなく、プロチームとしての意識にも差が出てきてしまっているようだ。

終盤はどのチームも疲れが見えてきたが、チームの問題点が議題になると激しく討論しだすシーンも

 これは選手個々人だけの責任ではない。20台前半の選手がほとんどで、ある意味社会人経験が少ない彼らには親となり教師となって導く人間が必要だ。チームオーナーやマネージャー、コーチも選手といっしょに受講していたが、彼らにとっても所属選手の関係性や考えが浮き彫りにされた有益な場であったし、自分自身の役割や振る舞いをいま一度見直すよい機会になっただろう。

 ライアットゲームズとしては、日本でのプレイヤー人口を増やすためにも、eスポーツを発展させたい。そのためには、象徴となるべきLJLに参戦するプロチームの成長が急務なのだろう。同社は今後もプレイヤー教育を行なっていく予定だ。

 こういった場を用意してもらえるLJLの選手には、プロゲーマーのなかでも恵まれた環境にいることを認識し、個人としてチームとして成長するきっかけにすることを願う。

 最後に自分たちが理想とするチームのイメージを共有するために、チームを生き物に例えて描くセッションの様子をお伝えする。ゲームが上手くても絵が上手とは限らない?

DetonatioN FocusMeは自分たちの欲張りなところを“ヘビ”に例えたようだが……

女性マネージャーに描いてもらうのはちょっとずるい?Rascal Jesterは殻を破って飛翔する鳥のようだ

7th heavenはクジラのような不思議な生物。粘り強く息が長いという設定のようだ。人が多く登場しているのも、メンバーの入れ替えが多いから

Unsold Stuff Gaming。ウサギが猛獣化したように見えるが、臆病さと大胆さがテーマだろうか

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