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”ニュー・エンタープライズクラウド”へ!Microsoft Azureが7周年

AzureがOSSと歩み始めた7年の軌跡を振り返る

2017年02月21日 07時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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2015年 OSSユーザー企業からOSS開発企業への転身

 2015年も、Azureのリリースラッシュは続く。AzureのSQL Databaseが現在のSQL Server 2016相当になり、この頃からMicrosoftのオンプレミス製品とクラウドサービスの開発速度が逆転する。新しい機能はAzureから先行してリリースされ、その後オンプレミス製品に実装されるようになった。

 この年は、暗号化などのエンタープライズセキュリティ要件を満たす機能強化や、AIへの投資(「Cortana Analytics Suite」が同年リリースされた)、IoTを支える「IoT Hub」、DWHサービス「SQL Data Warehous」やHDInsightの機能強化、「Azure Container Service」の発表など、手堅くしっかりと進化を続けた印象だ。これまでのWeb SitesやMobile Serviceなどを「App Service」として統合し、アプリケーション開発PaaSとしての使い勝手も向上した。

 また2015年には、OSS子会社のMS Open TechをMicrosoft本体に統合し、全社的にOSSやオープン標準に取り組むことを発表している。同年に発表されたAzureとRed Hatの包括提携は業界を驚かせ、OSSとMicrosoftの関係が大きく変わったことを強く印象付けた。

OSSを自ら開発提供するようになって「ソフトウェア開発企業のMicrosoftが帰ってきた」

羽野:2014年末に.NETをOSS化し、翌2015年にはVisual Studio CodeをOSSとして発表しています。Microsoftが自社製品をOSS化したことは、どんな影響がありましたか?

廣瀬:2015年の米国の開発者イベントでは、LinuxのDockerコンテナの中でOSSになった.NETを稼働させて、WindowsのVisual Studioからりモードデバックする、といったデモンストレーションが行われていました。これを見て、“なるほど、.NETがOSSとして公開された結果、どのプラットフォームでも動くのか”と実感しましたね。この時期には、新しいAzureサービスのSDKをGitHubで公開するのが当たり前になっていました。OSSを使うだけではなく開発提供する企業になり、“ソフトウェア開発企業のMicrosoftが帰ってきた!”とうれしく思いました。

2016年~2017年 “ニュー・エンタープライズクラウド”を目指して

 2016年のAzureは、深層学習や機械学習関連のテクノロジーに投資しつつ、同時に、アプリケーション開発PaaSとしての機能拡充、SAP HANA対応インスタンスの投入など基幹システム用途を想定したIaaSの機能強化を行なっている。

 同年、ディープラーニング(深層学習)ツールキット「CNTK(現Microsoft Cognitive Toolkit)」を機能拡張してOSSとして公開。また、アプリケーション開発PaaS領域では、サーバーレステクチャーに対応した「Azure Functions」や、マイクロサービス開発サービス「Azure Service Fabric」、Azureのサービスログと機械学習アルゴリズムを使ってSIEM(Security Information and Event Management)を実現する「Azure Security Center」などをリリースしている。

 MicrosoftのOSS開発企業としての色はさらに濃くなり、2016年にOSSプロジェクトのEclipse Foundation、Linux Foundationに参画した。

2017年現在のAzureの姿

羽野:2016年はAIブームでしたが、Azureも深層学習、機械学習のサービス強化が目立ちました。

廣瀬:そうですね。でもその裏では、ネットワーク周りや高度なセキュリティなどIaaSの基本的な機能が細かくアップデートされていきました。新しいAIのテクノロジーでビジネスをリードしながらも、エンタープライズ向けのインフラもしっかり強化していく。新しいモノを取り込んでクラウドらしいエンタープライズインフラを目指すという意味で、これからのAzureの方向性は“ニュー・エンタープライズ”という表現がしっくりきます。

羽野:2017年になってAzure Security Centerに追加されたAI検知機能などは、まさに廣瀬さんの言うところのニュー・エンタープライズですね。最後に、この先のAzureとOSSについての展望を聞かせてください。

廣瀬:振り返ると、2015年くらいにAzureがOSSをサポートし始めたとき、正直なところ“OSSはIaaSだけ、PaaSはMicrosoft製品で固めてくるのかな”と思っていました。ところが、その後「Cloud Foundry on Azure」が出てきて、OSSのPaaSがAzure上で動いてしまうとか。App Serviceも、WindowsベースのPaaSなのに「App Service Linux」やFacebookの「Parse」が移植されて動く、というのをリリースしています。

Microsoftがここまでやって、私自身がようやく、この会社のOSSへの取り組みはマーケティング上のメッセージではなく、OSSがMicrosoftの一部になっているのだなと感じることができました。使うだけでなく、OSSを作る企業になったのだと。

現在Azureは、自社製品に同じような機能があるOSSでも、構わずサポートしています。OSSを取り入れ、また自社製品をOSS化することで、多様な選択肢が生まれ開発言語やOSの壁が取り払われました。その結果、多くのユーザー、パートナーが集まるクラウドに進化を遂げたと感じています。

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