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1000兆個/sのニュートリノも撃ち出すぞ!!

大強度陽子加速器施設J-PARCの陽子ビームは世界一ィィィ!

2016年11月12日 12時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax) 編集●北村

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線形加速器でビームを光速の71%まで段階加速!

 J-PARCには、LINAC(Linear accelerator)、RCS(Rapid Cycling Synchrotron)、MR(Main Ring)の3つの加速器施設がある。いずれも淡々と加速器と電磁石が並んでいるわけだが、3つの加速器施設を利用して段階的に陽子ビームを加速させている。

 これは最適なエネルギーの陽子ビームを効率良く、必要な施設に送り、ターゲットに衝突させて研究に必要な粒子を生み出すためだ。

 LINACからRCSに陽子ビームが入射され、RCSからはMRと物質・生命科学実験施設に入射。MRからはハドロン実験施設とニュートリノ実験施設に陽子ビームを送っている。

 ビームというと延々と照射される光線をイメージするが、バンチ(塊)を連続して射出している。

今回取材する6施設の位置関係

 まずはLINAC(リニアック)から見てみよう。全長300mの線形加速器になり、L字を描いてRCSに接続されている。基点は負水素イオン源で、水素を高周波で加熱して負水素イオンを生み出す。

 次に電場を利用して負水素イオン源の外に負水素イオンビームを取り出す。ビームの強さは、この時点で50keVであり、複雑な構造を通せない速度なので、ストレートな道を作り、段階的に加速していく。

負水素イオン源。写真ほぼ中央にあるフィラメントからビームがスタートする

高周波4重極型線形加速器

 まず高周波4重極型線形加速器で3MeV(光速の8%)まで上げて、アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器で負水素イオンビームを収束させつつ、50MeV(光速の30%)まで加速させる。

アルバレ型ドリフトチューブ線形加速器

 分離型ドリフトチューブ線形加速器で181MeV(光速の55%)、環状リングを結合させたACS線形加速器(Annular-ring Coupled Structure Linac)で、400MeV(光速の71%)に到達させる。

分離型ドリフトチューブ線形加速器。同じものが設置されているが、徐々に長くなっていく

青い電磁石は収束用だ

ACS線形加速器。環状リングで長さを変更できる

パイプの長さは現場で決定されており、基本的にバラバラ

 RCSに入射する手前にある荷電変換膜で電子をはぎ取られ、負水素イオンビームから陽子ビームになる。加速器が一直線に並ぶだけの場所だが、用途に応じて段階的に加速器が変更されているため、大変かっこいい。

ACS線形加速器を抜けたあとは、ビームをゆっくりと90度曲げてRCSに向かう

分岐している部分もある。右は試射用のライン

分岐点

90度曲がったところにも試射用のラインがある

緩いカーブを描いているのは、ロスを減らすためだ

この壁の向こうにRCSがある。補助用の穴もあり

RCSへの入射直前はこんな感じ

ACS線形加速器の途中で、GatewayのノートPCを発見。Core i7のシールも確認できた

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