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東京から1時間の人口流出都市、横須賀の憂鬱と希望 ― 第4回

地元ブランド「ヨコスカネイビーパーカー」を生んだコワーキングスペース

2016年05月19日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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横須賀創造空間は市やヨコスカバレーと連携し、横須賀市や三浦半島の魅力を発信すべく「市民発のスペシャルチーム」として発足したNGOだ。現在はスタートアップが集う場所、地元課題を解決するための場所として、コワーキングスペース「ヨコスカテラス」を運営している。

コワーキングスペースという形で市民を巻き込みたい

 コワーキングスペースの運営という形で横須賀再生を進めているNGO法人 横須賀創造空間。横須賀創造空間の小坂浩人さんは、アイオメントというWeb制作会社で仕事をしつつ、ヨコスカテラスの運営に関わっている。

 小坂さんは23年前に地元横須賀でWebデザインの会社を起業したものの、半年後に東京に移転してしまったという経験を持つ。「当時はYRPの前身であるNTTの通信研究所があって、ITを推進する自治体として多くの方々が見学しにきていた。でも、実際は仕事もなかったし、銀行もあまり相手にしてくれなかった」と小坂さんは振り返る。

アイオメント代表取締役 小坂浩人さん

 東京に事務所を移してからは、少数精鋭である程度仕事を回せるようになったものの、業界全体が価格競争で縮小。会社をいったん閉鎖した小坂さんは、2006年以降、都内で個人事業者としてWebデザインを続けてきたという。

 そんな小坂さんが横須賀に戻って起業しようと考えたのは今から約3年前。コワーキングスペースを立ち上げようとしている横須賀創造空間のプロジェクトを知ったことで、このヨコスカテラスにコミットすることにしたという。「自分の働く場所も欲しかったので、とにかくコワーキングスペースを立ち上げたかった。あと、ずっと都内にいたので横須賀の人もわからなかった。ここに住んでいくのであれば、地元とのつながりは作っていきたかった」と小坂さんは語る。

 20年ぶりに地元に戻った小坂さん。「仕事がない」という現実は相変わらず変わらなかったものの、「ベランダから釣り糸が垂らせるようなマンションに住んでみたら、やっぱり地元はいいなあと思った」と感じたという。

ニートの多い横須賀で新しい働き方を提案したい

 現在、ヨコスカテラスは500円で2時間、1000円で8時間というドロップインでの利用形態のほか、月極での利用が可能なシルバー、時間制限のなくなるゴールド、最大4人までのコーポレートなどの会員制が用意されている。現状、ヨコスカテラスに集まるメンバーは、20代の意識の高い若者、脱サラして新しい働き方を模索している30・40代がメイン。「士業やフリーランスの方が多いです。スタートアップ向けの優待もあるので、そういう人たちを掘り起こしていきたい」と小坂さんは語る。

三浦半島で数少ないコワーキングスペース「ヨコスカテラス」

 横須賀創造空間の基地として、行政ができない地元課題の解決やスタートアップの創生を手がけるのがヨコスカテラスの大きな目的。4人の運営メンバーもイベント、情報発信、リテラシの向上など目指すものは少しずつ異なっている。その中で、小坂さんは「ものづくりの町 横須賀」を支援できるような仕組みを作っていきたいという。「横須賀は工業の町、職人の町。多くの工場はなくなってしまったが、ものづくりに携わる人は数多くいる。行政は外からの誘致を考えているけど、私個人としてはそういったものづくりの人が集まって、新しいモノを生み出せることを感じてもらいたい」(小坂さん)。実際、地元高校生発のブランドである「ヨコスカネイビーパーカー」のプロジェクトでは、地元のメンバーがここに集まって相談を重ねていたという。

 もう1つ掲げるのは、クラウドソーシングのような新しい働き方の提案。「横須賀はニートの数が全国平均の2倍というデータがあるんです。要は働かない人が多い。でも、もし働く意思があるのであれば、そういう人たちにはここに来てもらいたい」と小坂さんは語る。その点、小坂さんはクラウドソーシング事業者と連携し、自身がクラウドワーカーとして働いた経験などをシェアしていきたいという。

 せっかく外部から企業を誘致しても、優秀な人材がいなければ地元での雇用にはつながらない。「横須賀市民のITリテラシはそれほど高くないと思っています。だから、その部分を見える形で底上げしていきたい。足を運んで来てもらえば、いろいろ教えてあげられる」と小坂さんは語る。

 運営に携わることで、横須賀をなんとかしなければならないと感じる人たちの思いも伝わってきている。コワーキングスペースでは、他の人がどんな活動しているかが見えるのが大きい。運営の立場として、いろんな人たちの活動も知っているので、それらをつないでいきたいというのが小坂さんの希望だ。「お金が使えないので、とにかく時間をかける。市民に問題意識を持ってもらい、活動を外にアピールすることで、雇用の創生につなげていきたい」と小坂さんは語る。

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