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迫り来るBETAの脅威……『マブラヴ』の世界がVRゲームに!

2016年04月05日 17時00分更新

文● 佐藤カフジ 編集●ジサトラ ハッチ

↑会場には数百名とたくさんの『マブラヴ』ファンが集まった。

 4月3日、秋葉原にあるベルサール秋葉原にて、世界最大のPCプラットフォーム“Steam”で知られるValve社とHTCが共同開発したVRHMD“HTC Vive”の体験イベント“Muv-Luv × HTC Vive 体験会”が行なわれた。

 昨今、HTC ViveやOculus Riftなど新世代のVRシステムが話題を集め、VR関連の開発会社には多くの投資が集まり、国内外のゲームデベロッパーもVRコンテンツの開発に力を入れつつある。話題の尽きないVRの世界に、なんとあの『マブラヴ』が殴りこみをかけた!

 PCゲームファンならご存知の通り、『マブラヴ』はアージュが開発し、2003年に衝撃的なデビューを果たしたビジュアルノベル・アドベンチャーゲーム。はじめは平和な学園モノのギャルゲーと思わせておいて、唐突に残酷表現バリバリのロボットバトルモノへと大胆にシナリオをシフトする初代作は、多くのユーザーを鬱展開のドン底に叩き落としつつ、カルトなファンを多数獲得。

 続く2006年に発売された『マブラヴ オルタネイティヴ』以降、多数のスピンオフ作品がPC・コンシューマー機向けにリリースされ、複数回のアニメ化も果たすなど、今も多くのファンに愛されている作品だ。昨年末にはシリーズの英語化+マルチプラットフォーム展開を目指すKickstarterプロジェクトが当初目標金額の5倍あまりとなる125万ドルもの資金を集めるなど、海外ファンからも熱い注目を集めている。デジカとアージュが共同でリリース予定のSteam版にも期待が高まるばかりだ。

 そんな、日本のビジュアルノベル界を代表する燃え×萌え作品がVR化を果たしたということで、4月3日に秋葉原で開催されたお披露目イベント“Muv-Luv × HTC Vive 体験会”にて早速チェック。最先端のVRシステムHTC Viveを用い、グロテスクな地球外生命体“BETA”が跋扈する絶望的な戦場を体験してきた!

迫り来るタンク級の“BETA”に小銃1本で立ち向かう!

 “Muv-Luv × HTC Vive 体験会”を主催したのは、Steamの日本円決済や多数のタイトル展開を手掛けるデジカと、『マブラヴ』シリーズの制作を手掛けるイクストルおよびアージュ。これにGPUメーカーのAMDと、PCショップのドスパラを全国展開するサードウェーブデジノスが協賛する形で、今回のVR体験が実現した格好だ。

 イベントの告知がわずか10日前という急場にもかかわらず、会場には数百人の『マブラヴ』ファンが詰めかけ、VR版『マブラヴ』を体験するために開場の数時間前(午前6時!)から待機列に並び始める猛者もいたことを申し添えておこう。

 それほどの注目が集まった『マブラヴ』VR版。HTC ViveのHMDをかぶると、そこは薄暗い部屋だ。状況を掴めずキョトンとしていると、スタッフから2つのVRコントローラーを渡される。右手に自動小銃、左手にはテレポート装置。ふと振り返ると、背後にあったドアが開き、瓦礫に囲まれた荒野が見えてきた。左手の装置を使って、外にテレポートだ。

↑HTC ViveのHMDをかぶると『マブラヴ』の世界がリアルスケールで見えてくる。

 そこは孤立無援の戦場だった。周囲から聞こえてくる「ドシ、ドシ、ドシ」という不気味な足音に怯えていると、霧の向こうからタンク級の“BETA”が現れてきた! 体長はおよそ3メートル、真っ赤なボディに6本の足、不気味なほどに長い2本の腕。そして胴体の中央に巨大な口を持つグロテスクな生物……原作で最も多くの人間を食らってきた最悪のタンク級が、VRならではのリアルスケールで迫ってくるのだ。肉薄されるとまさに見上げるほどの大きさ。その大きな口に、自分の体全体を一口でかじられてしまいそうだ。VRだとわかっていても、本能のレベルで圧倒されてしまう!

↑タンク級は原作で人を食べられるシーンが多いため、ちょうど顔の辺りに歯が来る、実際より大きいサイズになっているとのこと。

↑迫りくるタンク級に右手の小銃(AK-47?)のみで応戦。圧力に押されて、ちょっと腰が引けている。原作ファンなら「そんなバカな!?」と絶望を覚える状況に思わず悲鳴を上げる人も。

「食われる~」と半狂乱になりながら、右手の小銃を撃ちまくって応戦。右手のテレポート装置で退却を繰り返しながら、次々に迫るタンク級を駆逐していく。次第に敵は数を増やしていき、遠方には体長十数メートルのグラップラー級の姿も……いよいよ絶望感が出てきたところで、周囲が霧に包まれていった。

 霧が晴れると、そこは広大な丘陵を目前にした塹壕の中。不気味な静寂にうろたえていると、遠方から「ゴゴゴ……」と地鳴りのような音が。遠方に目を向けると、タンク級、グラップラー級の巨大な群れが! 容赦なく距離を詰めてくる“BETA”の群れ。応戦しようにも手元の小銃は反応がない……見ると、薬莢が薬室に挟まっている。ジャミングだ。何匹ものタンク級が目前に迫り、もはや絶体絶命。

↑遠方に多数のタンク級とグラップラー級の姿が。

 その瞬間、目前の“BETA”が次々に爆散していく。爆音とともに背後から飛び出してきたのは“戦術機”!戦場上空を高速で機動しながら、瞬く間に大量の“BETA”を駆逐!続く第2波の群れに対しては、2機目の“戦術機”も参戦。空からの銃撃、地上での白兵戦で、あっという間に全ての“BETA”を撃破してしまった。

↑突如現れた戦術機(不知火・弐型かな?)に目を奪われる。

 戦闘を終えた2機の“戦術機”はプレイヤーの前に仁王立ち。20メートル近い全高を持つ“戦術機”の、リアルスケールで見上げる迫力といったら、もうこれはVRでしか体験できない臨場感だ。そんな“戦術機”に窮地を救われる、戦場の1兵士としてのVR体験。全体でわずか5分程度のコンテンツで、グラフィックの作り込みやオーディオの定位感などに急ごしらえ感のある部分も散見される内容だったが、HTC Viveのパワーで『マブラヴ』の世界が別次元に広がる大きな可能性をバリバリに感じる出来ばえだった。

ドスパラ各店でも体験デモを開催!

 そんな、残酷・絶望・戦術機のかっこよさが溢れる『マブラヴ』のVR体験。今後東京・大阪・名古屋のドスパラ各店でも体験できるようになる予定だ。各店とも数日にわたって体験エリアが常設されるそうなので、実施期間中にぜひ一度“Muv-Luv × HTC Vive”を体験しよう。最先端のVRが実現する、新たな作品世界の広がりを実際に感じ取ってみてほしい。

【東京】
ドスパラ秋葉原本店 4月9日~4月10日
秋葉原GALLERIA Lounge 4月9日~4月10日、4月29日~5月8日
【名古屋】
ドスパラ大須店 4月16日~4月20日
【大阪】
ドスパラなんば店 4月24日~4月26日

↑会場で急遽配布された号外チラシ。東京、名古屋、大阪のドスパラ各店で『マブラヴ』VR版が体験可能に!

 このVRコンテンツが実現するための立役者となった関係各者も、VRの可能性に非常に強い手応えを感じている。『マブラヴ』のSteam版展開やKickstareterプロジェクトの実施に深く協力したデジカはもちろん、デモ用にたくさんのVR対応ゲーミングPCを提供したドスパラ、そして快適なVR体験を可能にする強力なGPUを提供したAMD。この3社による協力関係は、これまでにも“OcuFes Japan”や“VR祭り”といった数々のVRイベントでHTC Viveを使ったVR体験の出展を実現してきている。関係者に話を聞く所、この協力関係はVRゲームの発展・普及に向けてますます深化していきそうだ。

↑デジカ、ドスパラ、AMDによるVR展開に尽力するデジカ事業開発部バイスプレジデントの岩永朝陽氏。

↑ドスパラはGALLERIAブランドのゲーミングPCPCを提供。VRデモにはAMD Radeon R9 Fury X 4GB HBM搭載の『GALLERIA ZKR』が使用されていた。

 それにも増してVRの未来にのめりこんでいるのが、『マブラヴ』シリーズ原作者・総制作指揮を務めるアージュ代表取締役の吉宗鋼紀氏だ。『マブラヴ』大のファンボーイ(ファンクラブ会員でもある)だというBRZRK氏とともに登壇したトークセッションでは、「VRは閉塞した社会に風穴を開ける突破口。皆さんの力を借りて、力を合わせて、できる所から社会を変えていきたい」と鼻息も荒い。

↑『マブラヴ』原作者の吉宗鋼紀氏、『マブラヴ』大ファンのゲームライターBRZRK氏を交えて展開したトークセッション

 BRZRK氏や集まったファンからは「原作のこんなシーンもVRで体験したい!」とさまざまな要望が飛び出したが、そのリクエストにも吉宗氏はノリノリ。原作シーンのVR再現、特にコックピット内の体験をVRで作っていきたいと意気込みを語っている。HTC ViveのHMDについても、「戦術機のコックピット内では網膜投影システムを使っていて、実際にああいうふうに見えているんです」と太鼓判。「オペレーターの声を好きなキャラにする機能をDLCでやってみたい」など、VR版『マブラヴ』に関する将来の企画案も次々に飛び出した。

 VRを通じて、『マブラヴ』の世界に新たな視点を加えていく。「自分の見たいものを叶えながら、皆さんの見たいものも作っていきたい」と語る吉宗氏のビジョンが実現していけば、『マブラヴ』ファンのみならず、日本のVRゲーム業界も大いに活気づいていきそう。そんな期待を持たせる今回のイベントを、数百人のファンも一緒に大いに楽しんでいた。

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