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秋田・湯沢市が取り組んだ経緯

伝わる情報発信へ、求められる自治体サイトのスマホ最適化

2016年02月10日 08時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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スマホ最適化した秋田県湯沢市の事情

 ちなみに「湯沢」といえば「苗場スキー場」が思い浮かぶかもしれないが、こちらは新潟県湯沢町。紛らわしいので新潟県の方は「越後湯沢」と呼んで区別したりする。

 秋田県湯沢市は、同県の南の玄関口。栗駒国定公園を県境とし、雄大な自然林や温泉群に恵まれる。人口は約4万8400人、面積は約790km2。酒・稲庭うどん・漆器・さくらんぼなどを名産とするほか、小野小町の生誕の地として、毎年6月には小町祭りが行われる。

 同県の課題は鮮明な人口減少。2040年には人口が3万人を割り込み、その半数が65歳以上になると推計されている。

 その対策として「働き方改革」に挑戦。「時間と場所を超え、人と仕事をつなぎ、地域を変えるべく、2015年末からクラウドソーシングを活用。市民が育児や介護と両立した働き方を実現できるよう、在宅ワーカーの育成に着手している」(藤井副市長)。

 また、出生率の高い鹿児島県伊仙町を見習って、「子育てシェア」という取り組みも進める。伊仙町は、特別な施策を行うでもなく高い出生率を維持している。その背景に、出生・入学・成人式などの大切な節目を、家族のみならず知人・友人・近隣住民がともに祝う地域文化があるという。すなわち「子育ての共助環境」である。秋田県湯沢市でも「子育てシェア」として、オンラインプラットフォーム上で子育て支援を必要とする人と応援したい地域の人材をマッチングする仕組みを整備しているところだ。

2040年には人口が3万人を割り込み、その半数が65歳以上になると推計

「子育てシェア」という取り組みを進める

 一方、災害状況については、東北内陸部にあり比較的災害は少ないものの、過去に豪雪・豪雨などで甚大な被害を経験。東日本大震災でも市内全域の停電や1万戸以上での断水が発生し、それ以来「地域住民の防災意識が高まっている」(藤井副市長)という。

 そこで県内各市町村との共同備蓄、退職自衛官の「防災監」採用、あるいは情報伝達体制などを整えてきた。情報伝達については、防災無線、コミュニティFM、エリアメール、広報車といった複数の手段を構築していたが、中でも文字情報を含むWebサイトについては課題があった。

 「それが、スマホサイトの未対応。市民がWebサイトから情報収集したいと思っても、普及の進むスマホで閲覧すると文字や画像が見えづらく、特に災害情報はピンチアウトして画面を拡大しないと読めないため、緊急時の用をあまり成していなかった」(藤井副市長)

 当初は予算を計上して自前でのスマホ最適化を検討していたが、ショーケース・ティービーの取り組みを知り、災害および観光ページのスマホ最適化を無償で行なってもらった。「スマホ最適化のニーズが高いのがこの2つ」(同氏)とのことで、今後はニーズに応じて他のページもスマホ対応するかを検討する。

 ショーケース・ティービーの森社長によれば、「ナビキャスト」を利用することで、スマホサイトを別途構築するよりも、約1/7にコストを抑えられるという。秋田県湯沢市のように、まずニーズの高いページからスマホ最適化を進めることで、その後の対応・検討に余裕ができるのもメリットだ。

秋田県湯沢市のサイトの課題

ショーケース・ティービーとの連携効果

行政のスマホ最適化が進まないワケ

 ではなぜ、行政サイトのスマホ最適化は進まないのだろうか。驚いたことに、消防庁や気象庁のサイトでも最適化は進んでいない。

 森社長によれば「多くの自治体に声がけする中で、どこも多忙で、スマホ最適化は優先度が低いのだろうと感じた」という。藤井副市長も行政の立場から「あくまでWebサイトを見やすくするという話で、やらないと見られないわけではないので、どうしてもプラスアルファという意識がある」と指摘する。

 ただ「スマホがここまで普及をしたのも最近なので、いまようやく住民のニーズに気づき始めたフェーズなのでは」(藤井副市長)という。

 今後ますますスマホでのWeb閲覧は当たり前になってくる。冒頭で述べたとおり、そこで手間取れば、緊急時に生死を分ける可能性もある。各自治体にはこうした取り組みも踏まえ、可能な限り迅速な検討・対応を望みたい。

 また、その場合は「スマホ対応」と「スマホ最適化」の違いを意識するといいだろう。ショーケース・ティービーによれば、「スマホ対応は情報をただスマホの横幅に合わせて縦に並べただけ。そうではなくユーザーの使い勝手を考えたレイアウトが重要で、必要なときに必要なコンテンツが見やすく表示されなければいけない」としている。

 その実例としては、それこそ秋田県湯沢市のサイトが参考になるはずだ。

「スマホ対応」と「スマホ最適化」の違い

スマホでアクセスすると、PC用サイトが表示された次の瞬間、スマホ最適化ページに切り替わる

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