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大谷イビサのIT業界物見遊山 ― 第21回

業界を席巻したSORACOM旋風から見えるユーザーの高い期待

半年でNGNの世界観を実現したソラコム、どんだけすごいんだ

2015年10月05日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月30日からの「ITpro EXPO 2015」でまさにキラ星のように鮮烈なデビューを飾った「SORACOM」。IoTを前提とした従量課金制の安価なSIMサービスに注目が集まりがちだが、サービスの本質はやはりクラウド上に実装したスケーラブルな交換機能にある。

圧倒的な情報発信力でITpro EXPOの話題をさらったソラコム

 9月30日、オオタニのFacebookのタイムラインは、早朝からSORACOM一色となった。9月28日に日経新聞を飾った後、情報解禁を経た各メディアが一斉に取材記事を掲出し始め、SORACOMのサービスの詳細がどんどん明らかになってきたからだ。もともと玉川さん自体の情報発信力も高いのだが、昼からは活用方法などを解説したブログやITpro EXPO 2015会場でのソラコムブースでの投稿もどんどんアップされてきた。

 今回、ソラコムはSORACOM Airという主力MVNOサービスに加え、SORACOM Beamという二の矢まで用意し、リリースに臨んだ。さらに実際のユーザー事例やエコシステムを実現するパートナー戦略、開発者向けの施策まであわせて披露した。スタートアップのみならず、大手メーカーやエンタープライズが次々とSORACOMのビッグウェイブに追従していることもアピール。加えて、ITpro EXPO Awardの大賞まで受賞し、イベント自体の話題を一気にかっさらった感がある。少なくとも、自分にはそう見えた。

 これぞ「垂直立ち上げ」と言える圧倒的な情報配信量とサービスのインパクト、そして玉川さんのパッションが、まさにバーストトラフィックとして、業界界隈に一気に流れ込む。IoTという新しいサービスに向け、デバイスとインターネットの間を埋めるラストワンマイルを巧妙に埋めるSORACOM。国産IoTプラットフォームの新星としてSORACOMが認知された瞬間だった。ITpro EXPOのブースで玉川氏は、「デバイスメーカーの人だけでなく、Webサービスの開発者がブースに来てくれた」と手応えを語る。

 今回のサービスは、シンプルでわかりやすいのも大きな特徴だ。玉川氏としては、クラウドの真価を理解されるまでに時間がかかったという過去の苦い経験から、価格面でも、内容面でもシンプルなサービスを手がけたのではないか。

5Gに求められる高付加価値なクラウド交換機で通信を“部品”に

 多くの人を魅了するSORACOMのインパクトとはなにか? 確かに低廉で柔軟性の高いSIMサービスに注目が集まるが、こちらはメインではないはずだ。格安SIMの低価格化は急速な勢いで進んでおり、大手が追従することも原理的には可能だ。SIMのソフトウェア化もすでに視野に入っている現在、絶対的な差別化要素にはなり得ない。

 これに対して、スケーラブルなクラウド型交換機はソラコムの競争力の源泉と言える。外部からAPIを用いて、通信を制御し、Webサービスと連携するという世界は、かつて多くの通信事業者が「NGN(Next Generation Network)」として描いた世界観そのもののように思える。そんなNGNを実現するようなパケット交換機とエコシステムをたったの半年で作り上げた。「AWSで作れないものはない」と豪語するクラウドネイティブなソラコムのすごみはまさにそこにある。

 現在、通信事業者向けの交換機はパケットの伝送と通信制御をノンストップで提供するだけのハードウェアではない。爆発的に増加するデータトラフィックをいかに効率的にさばくという役割だけではなく、通信事業者の利益となる付加価値サービスをいかに提供できるかに力点が置かれている。そして、時代にあわせて変化していく通信規格や、予想のつかないユーザーの通信動向にいかに柔軟に対応できるかが大きなポイントになっている。その結果として、交換機は実態としてすでにソフトウェアとなっており、当然端末がIoTまで拡がる5Gの時代にはクラウド化されるのは必須と言える。

 その点、SORACOMが提供しているのは、近未来の交換機である。現在、キャリアが提供している人向けのサービスのみならず、デバイスを含めた幅広い通信を扱う新世代のプログラマブルなシステムだ。これを使えば、モノ売りからサービスへの転換を図っている多くの事業者が今まで手を触れられなかった通信を、まさに“部品”として自由自在にコントロールし、新しいサービスを設計できる。真の意味でユーザーが通信を手にできる。今後は、デバイスから通信、そしてクラウドまで一貫したアーキテクチャを設計できるフルスケールな開発者が求められてくるだろう。

 当然、どのようなアーキテクチャかは気になる。オオタニも取材時にSORACOMを支えるテクノロジーについて玉川氏や安川CTOにたずねたが、「技術的な詳細を知らなくても、APIで使ってもらえる」とかわされてしまった。ブースにおいて玉川氏は、「ブースにはSORACOMの交換機能を実現している技術を知りたい人と、APIについてより深く知りたい人の2種類が来た」ともコメントしている。クラウドネイティブなアプリケーションのイメージがなかなか沸かない昨今、やはり興味を持っている人が多いようだ。今後、いろいろな形で詳細は明らかになるかもしれないが、テクノロジー面でもSORACOMへの興味は尽きない。

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