コスト削減や効率化から、積極的に稼ぐためのIT活用へ
では、攻めのITとはなにか。
もともとIT投資の対象は、業務の効率化やコスト削減が中心であった。そして、日本の企業では、いまでも依然としてその傾向が強い。
業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会の調べによると、ITがもたらした効果としては、日本の企業では、「社内業務効率化/労働時間減少」が44%、「社内情報共有の容易化」が41%と上位を占めた。まさに、効率化を重視する「守りのIT」投資が中心だ。
これに対して、米国の企業では、「製品・サービス提供の迅速化、効率化」が54%でトップ。次いで、「社外情報提供の効率化、提供量増大」が34%となった。
このように、米国の企業では、ITを活用して、企業の製品、サービス開発の強化、ビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出や、それを通じた競争力の強化を目指していることが浮き彫りになる。まさに、「攻めのIT」投資を行っているわけだ。
また、IT活用に対する経営の期待としては、日本は「業務効率化、コスト削減」がトップであるのに対し、米国では「製品・サービス開発」や「ビジネスモデル変革」などとなっており、米国では、競争力向上のためにITを活用する姿勢が強く見られたという。
同調査では、一部企業を対象にインタビューも実施したというが、米国企業からは、「製品が市場で競争力を持つためには、ITは重要である」、「ITは市場における自社の競争優位性を生み出すものである」という声が相次いだという。
こうした投資に対する意識の違いは、すでに大きな差になっているようだ。
国内のIT投資は、年間20兆円規模であり、GDP比では欧米と遜色ないが、日本の労働生産性は世界で22番目であり、主要先進国7カ国のなかでは最下位。IT投資の質の問題が指摘されている。
さらに、IT投資が極めて重要とする企業は、米国では75.3%に達したのに対し、日本ではわずか15.7%にとどまった。
「米国の経営者の75%が、攻めのIT投資が重要だと感じているが、日本ではそうした認識を持っている経営者が少ない。今後、企業の経営者に攻めのIT投資の重要性を訴えることが必要である」と、経済産業省では指摘する。
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