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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第65回

Apple Watchとデジカメでの既視感

2015年05月13日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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それではApple Watchは、何をもたらすか?

 昨今の体験を書いていたらだんだんと残りが少なくなってきました。こんなことを考えながらのカメラレビューと同時に使い始めたApple Watch。カメラに対するスマホのように、時計に対するスマートウォッチ、という関係性も出てくるのかもしれません。

 ただ、ここにもスマホは介在します。スマホ化は時計にも押し寄せており、時間を知る道具としての時計を、スマートフォンが代替しつつありました。その上で、改めてスマートウォッチが登場したわけです。

 Apple Watchを使っていて、機械式時計が勝る部分も数多く残されていることに気づかされます。3週間で気づいたところを3つ挙げます。

【その1】ケースが傷つきにくい工夫が
素材だけでなくデザインにも採用されていること

 Apple Watchのステンレススチールは、鏡面仕上げであることもあり、細かいかすりキズや長い曲線のキズまで、3週間で結構ついていました。特に時計の上側面に多く見られましたが、機械式時計のデザインでは、バンドを止めるせり出しがケースと一体でデザインされていて、その先端にキズが集中していました

【その2】どの角度からでも時間が確認できること

 Apple Watchは手首を自分の方に向けたときにディスプレーが点灯し、時間が表示される仕組みです。角度が決まっているわけではなく、現状よりも自分の方に向ける動作に反応しているようです。

 そのため、ディスプレーが消灯しているときに、それ以上変化をつけて手首を返せない場合、ディスプレーは点灯しません。一度手首を外側に回してから、再度、自分の方に向ける必要があります。

 当たり前の話ですが、機械式時計の場合、そもそも文字盤に針が存在しているわけですから、点灯、消灯、視野角などのディスプレー的な話は関係なく、いつでも時間が分かります。

【その3】ブランドやデザインという「個性」が楽しめること

 スマートウォッチ1作目で、完成度の高いデザインを実現しているものの、おそらくApple Watch Editionを持っていたとしても、ケースのデザインが同じであることから「Apple Watchである」という認識を持たれます。今までみんな、バラバラの時計をしていた分、みんな同じ時計をしているこの状況には少し違和感があります。

 もちろんこれらは、Apple Watchの改善余地でもあります。

 時計として一つ見落としている点は、Apple Watchはネットワークを活用して、どこででも正確な時間を刻むよう作られている点でしょう。機械式時計のように朝、ネジを巻いて時間を合わせるのも嫌いではないのですが。

 カメラがスマホのトレンドを取り入れるように、機械式時計がセンサーを内蔵して活動量などをスマートフォンに転送できる機能を搭載する、といった動きも見られます。しかしながら、デザイン面、そして個性を発揮するという面は、Apple Watchでは当面実現しにくい要素でしょう。

 スマートフォンやスマートウォッチの登場は、既存の製品に対して、「市場を食われる」というネガティブな面だけではありません。スマートフォンのカメラが「写真を集中して撮る楽しみ」を再発見させたように、スマートウォッチも、時計が持つ魅力や役割を再発見させてくれるはずです。

 そういう意味で、既存の時計メーカーはあまり安直な提携や追随をせず、スマートウォッチで見つかる、さまざまな理由で実現し得ない「魅力」を際立たせると、面白いのではないでしょうか。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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