1TFLOPSあたりの価格は
ASC Purpleのほぼ3分の1
このQCDOCの最初のチップは2003年末に登場しており、最終的にはエジンバラ大のEPCC(Edinburgh Parallel Computing Centre)、理研BNL研究センター、それとブルックヘブン国立研究所の3ヵ所に、それぞれ10TFLOPSのQCDOCのシステムが設置された。
特にブルックヘブン国立研究所の場合、米エネルギー省が出資したQPDOCと、理研BNLセンターのQPDOCが両方並び、あわせて20TFLOPSのマシンが設置された形だ。
最終的にQCDOCは2005年5月に運用を開始したが、消費電力は1システムあたり100KWにすぎず、また設置面積も100平方フィートと極めてコンパクトに収まった。システム価格は1システムあたり500万ドル程度と、これもASCI/ASCのシステムとは桁違いに安価である。
QCDOCのシステムは最終的に12288ノードで構成され、理論性能は12.3TFLOPSということになるが、TOP500にはブルックヘブン国立研究所のシステムのうち8192ノード分を、それも各ノードを400MHzで駆動した際の数字のみがリストアップされている。
理論性能6.6TFLOPSに対して実効性能は4.6TFLOPSと効率70%程度に収まっており、絶対性能は2006年11月で152位なので、相対的にはそう高速というわけではない。
ところが同じ2006年11月の性能/消費電力比を見ると、例えばASC Purpleが実効性能75.8TFLOPSに対して消費電力が1992KWなので、おおむね38.1KFLOPS/Wといったところ。対してQCDOCは消費電力89KWで実効性能4.6TFLOPSなので、51.7KFLOPS/WとASC Purpleよりも効率が改善していることがわかる。
もっと重要なのは価格性能比である。連載293回でも触れたとおり、ASC Purpleは付帯設備まで込みだが2億3000万ドル、対してQCDOCは500万ドルである。したがって、1TFLOPSあたりの価格で比較するとASC Purpleが約304万ドルなのに対し、QCDOCは約109万ドルとほぼ3分の1に下がっている。
こうしたコストパフォーマンス性、あるいは性能/消費電力性のよさをASCプロジェクト関係者が非常に注目するようになってきたのは、なにせ肝心のASCプロジェクトのシステムがいずれも巨大な設置面積と消費電力を必要とし、その割にASCI Qのように効果が薄いケースまであったりしたことの反省でもある。
さすがにメインストリームをいきなりこうしたシステムで置き換えるのはリスクが高いと思ったようで、別系統のシステムとしてこのQCDOCの考え方を基にした研究開発プロジェクトを立ち上げることにした。
このプロジェクトはAdvanced Architecturesのサブプログラムの1つとして、2001年9月にIBMと契約を結んだ。これがBlue Geneプロジェクトである。次回はそのBlue Geneの最初のシステムであるBlue Gene/Lを解説する。
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