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現行の3.5倍の性能を持つ新CPU「Cortex-A72」を中国で発表したARM

2015年02月08日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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 英ARM社は、2月3日(イギリス時間)の発表に合わせ、中国・北京でプレスカンファレンスを開催した。基本的には中国本土のプレス向けのイベントだったが、台湾や日本からも若干名の参加があったようだ。

ARM社は、2月4日に北京でCortex-A72などの発表を行なった

モバイル機器がもたらす体験を
さらにアップグレードする「Cortex-A72」

 発表はPete Hutton氏とNoel Hurley氏が行なった。最初に登場したHutton氏は2014年の状況を振り返るために、その5年前にあたる2009年のスマートフォンと2014年のスマートフォンを比較し、テクノロジー進化の速度が加速していると語った。その後に今回の発表対象となる4つの製品を「明日のプレミアムなモバイル経験を再定義するもの」として紹介した。

ARM社執行副社長兼プロダクトグループ社長のPete Hutton氏

CPUグループ担当ジェネラル・マネージャであるNoel Hurley氏

 さらにHutton氏は、そのモバイル体験を「何でも、どこでも、いつでも」として説明する。今回発表した64bitコアとしては第2世代となる「Cortex-A72」や新GPU「Mali-T880」を搭載する新しいモバイル機器は、ゲーム専用機並のゲームを可能にし、4KビデオやUHDのマルチキャストなども実現する。これまで専用機やデスクトップPCでしかできなかったことを、どこでもいつでもできるというわけだ。

2014年のスマートフォンとその5年前となる2009年のスマートフォンを比較

今回の製品は、明日のプレミアモバイル体験を再定義するものだとした。発表された製品は4つ

 さらに将来的には、モバイル機器でも自然言語認識をクラウドの助けを借りずに実現すると予測。一般ユーザーにとっては、オンラインでもオフラインでも同じ機能が使えることが重要だからだという。

Hutton氏は、「何でも、どこでも、いつでも」の例として、ネットワークに接続しなくても利用可能な音声の自然言語認識機能を挙げた

今回の製品が可能にするものとして、専用機並のゲームや4Kビデオのストリーミングなどを紹介した

現行のCortex-A15の3.5倍の性能を持つCortex-A72

 具体的な発表製品はNoel Hurley氏が行った。今回発表されたCortex-A72などは、2016年にチップの量産とともに搭載製品がリリースされる予定だ。製造は16nmプロセスを用い、Cortex-A72+Cortex-A53によるbig.LITTLEコンピューティングにより、現在の32bitコアよりも低消費電力を実現するという。

今回発表したCortex-A72などを搭載した製品は2016年には登場するだろうと予測

 さらにMali-T880やビデオプロセッサ(Mali-V550、2014年発表済み)やディスプレイプロセッサ(Mali-DP550、同)では、高速な高解像度のグラフィックスや4Kビデオなどの扱いが容易になる。

 Cortex-A72は、現在の32bitプロセッサと互換性を持つ64bitプロセッサだ。64bitのARMv8アーキテクチャでは、32bitとまったく違う命令セットを持ち、レジスタなども増えているため、64bit化による高速化が期待できる。

Cortex-A72は、ARMv8アーテキクチャの2世代目となるプロセッサ。高い性能と低消費電力を両立させる

 Noel Hurley氏によれば、Cなどの高級言語で記述されたプログラムならば、コンパイラの最適化により、レジスタの多い64bit命令セットにおいて、より多くの変数をメモリではなくレジスタに割り当てることが可能になるため、データのアクセス時間が短縮され、アルゴリズムなどを変更しなくとも、ある程度の高速化が期待できるという。

 実際、2014年の主力だったCortex-A15と、Cortex-A72を比較すると、同等の電力枠では3.5倍の速度差があるという。しかも、これはピーク性能ではなく、一定の処理を行なった場合とのことだ。

Cortex-A72は、昨年使われたA15の3.5倍のサスティン(持続)性能を持つ。ピーク性能ではないため、ユーザーの体感に近いとする

 また、消費電力に関しては、同等の処理を行なわせた場合に、Cortex-A72は、Cortex-A15と比較して75%減の消費電力になるという。また、big.LITTLE技術を使い、低負荷時にA53を動作させるようにすると、さらに40~60%の電力削減が可能になるという。

 この性能差や電力効率の高さは、製造プロセスによるものや、回路の最適化によるもの、そして内部アーキテクチャ変更によるものだとする。

同じ処理を行うとCortex-A72は、Cortex-A15の25%の電力で動作できる。またbig.LITTLEによりさらに40~60%の電力削減が可能だという


(次ページでは、「TSMCの16nmプロセスで製造を予定するCortex-A72搭載SoC」)

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