シューターはそのまま救命ボートになる
地上に緊急着陸した場合は、ドアについているシューターが自動的にふくらみ、スライダー(すべり台)として機能する。
しかし水上に着陸した場合は、シューターそのものが救命ボートになる。乗船したあとは、飛行機から切り離し、天候によってはサバイバルキットと一緒に備え付けてある屋根を張る。この中に50~60人が避難するが、さすがに緊急用なのでかなり手狭だ。
またボートとセットになっているサバイバルキットには、非常食や飲み水、救援を求めるための鏡や、ボートに穴が開いた場合の補修キット、薬などが入っている。
機内にあるAEDで心肺停止からの蘇生訓練も
公共施設でよく見かけるAEDだが、JALではすぺての飛行機に搭載している。心筋梗塞をはじめとした、突然の心肺停止に有効で、処置を早くすればするほど生存率も高くなり、後遺症(おもに脳へのダメージ)の発生率も低くなる。
ただAEDは万能ではなく、心臓が痙攣(除細動)して、ドクドクと血液を送れなくなってしまう(血液のポンプとして機能していない)症状に対して有効。医療ドラマのように電撃を加えて、止まった心臓を動かすというものではない。それゆえ、ふたたび心臓が鼓動し始めるまで、心臓マッサージと人工呼吸が欠かせないのだ。
JALのCAは、そんな万が一の事態にも対応できるように、心臓マッサージと人工呼吸器による救命措置の訓練も受けている。
心臓マッサージは体力を使うため、3人のCAが交代で心臓マッサージ担当、人工呼吸器担当、気道確保+タイミングのカウント担当を交代。他のCAは搭乗している医師に協力を依頼する「ドクターコール」をしたり、コクピットに連絡して急患を受け入れられる病院・空港がないか?などを手配するという。
もし医師が協力を申し出た場合は、医師専用のメディカルキットも用意されている。これには小型心電図モニターや血圧計、聴診器といったものから、誤飲したものを吸引するセット、点滴セット、気道を確保する気管内挿管セットなどもあるという(一部は国際線のみ搭載)。また処方薬もキットに入っており、生理食塩水や血圧や血管、心臓に関する薬をはじめ胃薬まであるようだ。
CAの笑顔は旅客の安心と安全を運ぶ自信の裏づけだった
ホンモノの機体は、最新鋭のAVシステムを搭載した機内エンタテインメイントをサービスしている。しかし最新の緊急着陸訓練設備は最新のAVシステムを使い、より臨場感のある訓練で旅客の安心と安全を確保している。
さらに全便にAEDが搭載され、保安要員としての責務に加え、初期救命措置の訓練も行なっている。
機内サービスで見せてくれる笑顔は、日々の訓練の成果と自信という裏づけのある、頼もしい笑顔なのだ。