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JALの新しい緊急着陸訓練施設はハイテク満載!

2015年01月17日 15時00分更新

文● 藤山 哲人

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新施設はハイテク満載!

 新施設の特徴は、よりリアルな訓練ができるようになった点だ。機内施設が747から777になったのはもちろん、次のような点がハイテク化されている。

  • 高音質スピーカーの採用で臨場感高まる音響
  • スーパーウーファーによる衝撃音などのリアルな再現
  • スモークマシンによる煙の演出
  • 窓に液晶パネルを搭載して外の風景を再現

 スピーカーは、館内放送に使う安っぽいヤツではなく、見る人が見るとわかる例の会社のヤツ。高音質で低音~高音までクリアに再生でき、衝撃音やタイヤのノイズ、はたまた旅客の悲鳴からクラッシュ音までリアルだ。

機内を模した天井には、例の会社のスピーカー

 CAはスピーカーから再生させる大音量のノイズや悲鳴に負けない大声で、旅客を誘導。電気系統がアウトになっている可能性が高いので、アナウンス用のマイクを使って誘導するなんてことはないのだ。

スピーカーから聞こえる大音量に負けないように声を張り、脱出誘導をする

 さらに重低音がとどろくサブウーファーも搭載。実際にブツを見てみると、ウーファーどころじゃなくて、低周波振動発生装置だった!

低周波振動発生装置。「ボディーソニック」なんて言われるアレと一緒

 人によっては「どの軍が採用してる兵器だよ?」と思うかもしれないので補足しよう。ウーファーは人の可聴範囲の下限といわれる20Hz以上の音を再生するスピーカーだ。しかし、搭載されていたスピーカーには、スピーカーの紙の部分がなくて、強力電磁弱が床を直接叩きつけるスピーカーであってスピーカーでないもの。

 つまり20Hz(20回/毎秒)以上の「音」を再生するんじゃなくて、それ以下の「揺れ」を再生するスピーカー型起振装置なのだ。もっと簡単に言うと、遊園地のアトラクションやゲーセンにある大型筐体などのシート下に付けられていて、映像に合わせてドコドコお尻を殴られるアレだ。

 さらにスモークマシンを使い火災などによる煙の演出もできる。コンサートなどでも使われるスモークマシンだが、昔はドライアイスの煙(二酸化炭素:炭酸ガス)が主流だったが、設備に搭載されているものはリキッドを使う方式。

 煙は吸い込んでも無害でかつ、ドライアイスより長持ちするのが特徴だ。10秒も噴射すれば、視界は2~3mになるので、まさに煙に巻かれた状態になる。

 そして今回取り入れられたのが、窓に埋め込まれた風景表示用液晶ディスプレーだ。たとえば緊急着陸しドア近くで出火している場合など、旅客の安全を確保できないドアからは脱出しない。

 そのため脱出直前にはドアの小窓から外を覗き、安全確保できるかを必ず目視、呼称する。新しい設備は、ドアの小窓に液晶ディスプレーが埋め込まれていて、飛行中から陸や海に着陸した様子が映し出される。

左から地上、飛行中、海上の景色。この他にもさまざまな景色を表示できる

 「オレに頼んでもらえば3日で作ってやるよ!」というような単純なしかけだが、演出効果は最大だ。なにせ以前は、訓練教官が窓の前に「火災」や「着水」という文字を書いたフリップ(もしくは口頭で状況を指示)を出していたのだ。とってもアナログだが、機器が故障することもなく、一番確実な方法ではある……。

訓練設備の全体をコントロールする操作卓。旧施設ではスイッチがひしめいていたが、タッチパネル式になってスッキリ

 このような施設を使い、あらゆるシーンを想定した訓練を行ない、体が反射的に反応するほどに訓練を積むという。とくに誕生月に行なわれる、年に1回の定期救難訓練の数ヵ月前から胃がキリキリ痛むという。なぜなら訓練に合格しなければ、翌日から乗務停止となるからだ。

施設だけに左側のドアは787(矢印が緑)、右側のドアは777(矢印が赤)になっている

→次のページヘ続く (知っているようで知らない救命胴衣

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