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業界人の《ことば》から 第113回

20年前の最速スパコン、いまのスマホと同じ性能

日本の電子製品出荷額、全世界でのシェアが10ポイントも減少

2014年10月14日 09時00分更新

文● 大河原克行

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技術革新を象徴する製品のなかで日本が主導権を取れなかった

 この要因を山本会長は次のように自己分析する。

 「大きな要因は、グローバル対応が遅れている点。技術革新による性能向上とともに、コスト低下によるコモディティ化が進展。より手頃に購入できる製品が需要の中心であるにも関わらず、価格競争には十分に対応できなかった。そして、新興国中心に成長した世界経済の流れに乗れず、相対的に日本の構成比が減少している」とする。

ムーアの法則などが有名だが、スーパーコンピューターは10年で1000倍の性能を実現している。

 技術革新という点では、製品の革新的な性能向上により、市場シフトをもたらしたとする。その最たる例がスマートフォンだ。

スマートフォンに170GFLOPSの性能が詰め込まれ、さまざまな機能が集約されるようになった。

 富士通は、いまからちょうど20年前の1994年11月、世界最高性能を誇るスーパーコンピュータ「数値風洞」を開発した。当時のグラフィック演算性能は、170GFLOPSだったという。ところが、今年発売した富士通のスマートフォン「ARROWS NX F-05F」は、167GFLOPSの性能を発揮する。「20年前の世界ナンバーワンスパコンの性能が、みなさんの手のひらのなかにある」(山本会長)というわけだ。

 続けてこうも語る。

 「しかも、ゲームや音楽プレーヤー、カメラといった専用機で提供されていた機能もこのなかに含まれている。スマートフォンのなかに様々な製品が吸収されていった」

 日本のIT・エレクトロニクス産業は、こうした激しい技術変化のなかで苦しんだと、山本会長は指摘する。技術革新を象徴する製品のなかで日本が主導権を取れなかったからだ。

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