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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第48回

セルフパブリッシングの未来(7)

スマホ時代の無料コミックのデファクトとなるか?――comicoの戦略を聞く

2014年10月05日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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NHN PlayArt代表取締役社長の稲積憲氏にお話を伺った

アプリ500万DL、初単行本『ReLIFE』も16万部突破

 スマホ向けマンガアプリの双璧をなす、comicoとマンガボックス。

 マンガボックスが従来のマンガのフォーマットを踏襲し、『金田一少年の事件簿』などの担当編集として名高い樹林伸氏をはじめとするプロの編集者が作品作りに取り組むのに対し、comicoはユーザーの投稿作品で構成され、フォーマットもスマホで読みやすいとされる縦スクロールに拘る。

 無料からどのようなマネタイズを図るのか、作家にはどのように還元されるのか。NHN PlayArt代表取締役社長の稲積憲氏、そしてcomico初単行本作品『ReLIFE』の作者・夜宵草(やよいそう)さんに話を聞いた(※夜宵草さんへはメールインタビュー形式)。

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土俵が違えばこその「投稿型」特化

―― comicoが生まれた背景を教えてください。

『ReLIFE』は、comicoから生まれたマンガの初単行本化作品だ(夜宵草/アース・スター エンターテイメント)

稲積 「2013年4月にNHN PlayArtはLINEと会社分割し、ゲームを中心に事業を展開していく会社として出発しました。今の社名には、遊びを楽しむ=プレイと、創造=アートという思いが込められています。

 そして日本だけでなく世界に向けても、ゲームだけでなく様々なエンターテインメントサービスを提供していきたいという思いがそこにはありました。そんななか、マンガはいの一番に上がってきた候補なんです。既存事業とのシナジーも期待できますし。

 マンガは日本が世界に誇るコンテンツです。でも最近は、スマートフォンなどの普及に伴って、電車に乗っていても、かつてのようにマンガ誌を読んでいる人をあまり見かけなくなりました。皆スマホを開いて、SNSやゲームをしている。今も素晴らしい漫画作品は生まれているのに『そもそも読む機会が減っているのでは?』と感じていたというのが背景にありました。

 一方、その状況を作家の側から見ると“発表するチャンスが少しずつ減っている”ことになります。ならば、我々の得意とするインターネット、スマートフォンという“舞台”で、作家さんと読者さんをつなげていきたいと考えたのです」

―― comicoの大きな特徴は、従来の電子マンガ雑誌、例えばマンガボックスなどと異なり、ユーザーの投稿作品のみで構成されている点です。なぜこのようなサービスにしようと考えたのでしょうか?(註:マンガボックスも3月から「インディーズ」と銘打ってユーザーの投稿作品を受け付けている)

稲積 「マンガボックスさんよりも若干早くサービスを開始した我々も、企画当初は出版社と協業する、あるいは自分たちで編集部を持つということも検討していました。

 でも、あまりにも土俵や文化が違い過ぎる。『ゲームの会社と何をやるの?』という感じになりかねないだろうと(笑)。ですので、まずはできるところからスモールスタートで行こうと考えたのが実際のところです。

 当初はスカウトという形で56作品を公開するところからスタートしました。そしてサービス開始から約2ヵ月が経ったところで“投稿機能”を提供し、マンガを発表したいという人なら誰でも気軽に作品を投稿できる環境を整えました。現在は、投稿された作品のなかから、読者の支持が高い作品などを、我々が“公式作品”と呼んでいる連載コーナーに取り上げさせていただく、ということを進めています。

 時折コンテストも開催していますが、その結果、投稿される量や質も上がってきており、良いサイクルに入っているという手応えがあります。作品発表の場としてもcomicoは作家さんたちから認知されてきたなという印象を持っています。

夜宵草さんにメールインタビュー その1

Q:なぜcomicoで作品を発表しようと?

夜宵草 「comicoさんから声をかけていただいたことがきっかけです。周りの皆は怪しんでいた(笑)のですが、今までのマンガにない新しい可能性が感じられ、是非チャレンジしたいと思いました。私がcomicoの会社が運営している“ハンゲーム”のユーザーであったことも大きかったです」

公式作品の連載スケジュール。毎日14~16作品ほどが週刊連載されている。週刊誌が毎日読めるようなイメージだ

―― ReLIFEの作者・夜宵草さんがまさに御社から声を掛けた=スカウトした最初期の作家さんですね。その後も投稿作品中心いうことは、いわゆる編集部のような機能は置いていない?

稲積 「そうですね。我々の場合も当然“担当”がいて、“公式”で連載いただいている作家さんと対話をしているんですけれども、一読者として助言をしたり、ストーリーに矛盾があるところを指摘したりはしますが、大原則として作家さんの書きたいように書いていただくというスタンスでやっているのが大きな特徴です。

 現在の社名になる前から、14年ほどオンラインゲームのサービスを運営してきて培った意識がベースにあるかもしれませんね。サービスやコンテンツの善し悪しは、最終的にお客さん(ユーザー・読者)が判断するものだということです。comicoの場合も、それはハートアイコンが押された数やコメントでダイレクトに作家さんに伝わるわけですから」

―― 現在、公式連載は何作品あって、それを総勢何名で担当されているのですか?

稲積 「6名です。今、97の公式連載作品(9月30日現在)がラインナップされていますから、1人あたり16作品を担当していることになります。かなり多く感じられるかもしれませんが、漫画雑誌のようにネームから打ち合わせて構想を一緒になって練る、ということは行なっていません」

夜宵草さんにメールインタビュー その2

Q:いわゆる「担当編集」がいないことが作品作りにどのような影響を与えていますか?

夜宵草 「基本的に作家側に任せてもらえるので、描きたいものを伸び伸びと描くことができます。当然、きちんとチェックが入るのでボツになることや修正が入ることもありますが、自由度や柔軟さはネットサービスならではと感じています。確かに直接打ち合わせをする機会は少ないですが、それこそネットを通じて迅速に相談に乗ってくれますし、各作家に合わせた柔軟な対応をしてくれているな、と思います」

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