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まつもとあつしの「メディア維新を行く」第46回

ユニバーサルミュージックのキーパーソン・鈴木貴歩氏に訊く

Spotify上陸直前――定額配信とリアルイベントは音楽に何をもたらす?

2014年08月26日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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 音楽定額配信サービスが本格的に日本にも上陸しようとしている。2000万人以上のユーザーを持つスウェーデン発のSpotifyは日本法人をすでに設立、年内にもサービスを開始すると予想されている。日本国内では、dアニメストアなど映像の定額配信は浸透しつつあるが、音楽の世界ではどうだろうか? 海外の定額配信サービスへで積極的に楽曲提供しているユニバーサルミュージックのキーパーソンに聞いた。

ユニバーサルミュージックでデジタル事業開発部本部長 兼 コンシューマー・インサイト推進室室長を務める鈴木貴歩氏にお話を伺った

トレンドはダウンロードから定額配信へ

―― 海外では、iTunesのようなダウンロード型の音楽販売が低調となり、代わって定額ストリーミングの人気が高まっています。

鈴木 「最新(2014年1月~3月)のRIAJ(日本レコード協会)の調査結果を見ても、シングルやアルバムのダウンロードは若干落ちています。いわゆるガラケー向けのダウンロードサービスが、スマホシフトが進むなか、キャッチアップできていないという状況が続いているんです。

 それに対して、国内でもいわゆる定額配信=サブスクリプションと呼ばれるものはすでに浸透し始めていて、例えばドコモさんとレコチョクさんでやっている、dヒッツというサービスがこれを牽引しています。市場規模は4倍になっており、ダウンロードの落ち込みを支える恰好になっていますね。

 ただ、この期間はエイベックスさんの『Let It Go』(『アナと雪の女王』主題歌)の大ヒットがあり、ダウンロードも含めて、多くの方がネットで音楽を購入するきっかけを生んだという要因もあります。このきっかけが次の楽曲へとつながって欲しいなという期待はありますね」

―― そんななか、ユニバーサルミュージックとしてはどのような取り組みを?

鈴木 「いわゆる“デジタルマーケティング”の活用を進めています。

 昔のようにテレビを見て、CDショップに行って音楽アルバムを買うといったシンプルな消費行動から、起点はテレビで知ったとしても、YouTubeで検索して何度か再生して満足し、いったんその音楽のことを忘れて――というのが現実だと思うんですが(笑)――ソーシャルゲームやSNSを楽しんだ後、まだ“何か”が残っていればちょっと買おうかなあ?みたいな、ユーザーの回遊=カスタマージャーニーを意識したマーケティングを行なうということですね」

―― それはつまり、消費者が様々な経路をあたかも旅するかのように音楽に辿り付く……そんなイメージですね。なるほど。

鈴木 「そのカスタマージャーニーをどう捉えていくか、私たちは音楽ダウンロードや、CD・DVDの販売への誘導も含めて、TwitterやYouTube広告の活用を進めています。

 どんなサービスにどのように音源をライセンス・開放していくかという部分と、そうすることで、どのように売上を伸ばすかという両面で、さらに工夫の余地があるはずだと感じていますね」

本格的にウィンドウを意識し始めた音楽業界

―― アニメや映像ビジネスの世界だと、ウィンドウイングという考え方があり、かつては音楽もシーケンシャル(一方通行)で、ある程度定まった展開をしていたものが、だんだんと多様になってきた。そのなかで売上の最大化を模索している段階であるということですね。

鈴木 「そうですね。映像の世界ですと、ある程度定まったウィンドウ戦略があり、それぞれのメディアから得られるバリューに対して一定の条件でコンテンツを出していく、というモデルが確立されていたと思います。逆に、音楽業界はサブスクリプションが入ってきたことで、本格的にウィンドウを意識し始めたとも言えます。

 以前からもレンタルCDでウィンドウを意識することはあったんです。シングルだと発売から3日、アルバムなら3週間は間を空けてからレンタルするといった具合に。着うたの場合は、最初はデジタルに対する警戒感からやはり1週間は空けるみたいな考え方もありました。

 それがどんどん同じ日になっていき、やがてCDよりも先行させて話題を作るというところまで来た。ユニバーサルでは青山テルマやGReeeeNが早くからそういった取り組みを行なってきましたね。

 先行期間もカスタマージャーニーに合わせて、最初は着うた45秒を無料でダウンロードしてもらって、フルで1曲ダウンロードして聞いてもらったら、今度はアルバムを買っていただく、という風にもなっていきました」

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