バランスの良さでは、オリジナルの2.1ch再生も捨てがたい
本編38分とテレビシリーズの1話分よりは長めだが、あっという間に視聴は終了。ここでは4.1chと2.1chの違いについてもう少し詳しく書いていこう。
その前に「センシャラウンド改方式」について解説する。そもそも何故5.1chではなく4.1chなのかという疑問を持つかもしれない。これはサラウンドスピーカー用の信号が左右2ch別々ではなく1chにまとめられているためだ。筆者宅では前方に2つ、後方に2つのスピーカーを置いて視聴しているが、センシャラウンド改で実際に収録されているのは、フロント右/センター/フロント左の前方3チャンネル+後方1チャンネル+LFEとなる。
視聴した前方2台+後方2台のスピーカー配置では、センタースピーカーがない。しかし、センターチャンネルの信号はAVアンプがフロント左右のスピーカーに振り分けて再生するので、センターチャンネルの音がなくなるということではない。同様に後方1チャンネルの信号も、後方2台のスピーカーに振り分けられることになる。
オリジナル制作された音は2.1chの「センシャラウンド方式」のようなので、4.1chの「センシャラウンド改方式」は、前方左右のチャンネルをセンターやサラウンドに音を振り分けたものと言うのが正しそうだ。
そのせいもあるし、センタースピーカーなしでの再生だったせいも多少ありそうだが、「センシャラウンド方式」の方が前方の音が濃密で、特に声の再生音のレベルがやや高めに感じる。真後ろから聞こえるはずの音や、狭い戦車内での空間の響きなどはやや薄れてしまうが、前方音場がしっかりとしているので、映像の迫力がなくなってしまうということもない。むしろバランスとしては2.1chの方が良いのではないかと感じたほどだ。
そして2.1ch再生でも、AVアンプがフロントスピーカーの足りない低音をサブウーファーで補助するよう振り分けるので、低音の伸びや力強さが劣ることもない。
これは同時収録されている2.0ch版の音声を聴くとよく分かる。
今回視聴したシステムでは、2.0ch版でも、サブウーファーが2本のスピーカーの補助として動作するが、低音専用のLFEチャンネルの音はなくなるので、砲撃の迫力などは多少非力に感じてしまう。砲弾が厚い装甲に弾かれたときのカン高い響きも、本来の低域がないため、重みが抜けてしまっている。
ちなみにテレビ内蔵のスピーカーや、一般的なステレオアンプで音を聴く際には、低音専用に独立したチャンネルが単純に切り捨てられてしまう場合があるので注意が必要だ。AVアンプであれば、サブウーファーがない場合でも、フロントスピーカーにその信号を重ねて再生することができる(フロントスピーカーにそれなりの低音再生能力が必要だが)。本来の「センシャラウンド方式」の迫力を聴きたいのであれば、仮に2台しかスピーカーを持っていない場合でも、AVアンプの導入を検討したい。
最後に、4.1chで筆者自前のシステムでも聴いてみた。
さすがに全体的な音の厚みや低音の底力は30cmウーファーを備えた大型スピーカーの方が雄大になるが、戦車戦の迫力や臨場感といった印象では思ったほどの大きな差が出なかったことに注目したい。
良質な小型スピーカーとサブウーファーによる2.1ch再生のポテンシャルがかなり高いことを示している。セッティングの難しさもAVアンプを使えば誰でも簡単にクリアーできるので、設定や調整で悩む心配はほとんどない。
サラウンド再生に限らず、部屋のスペースなどを考えて小型スピーカーを選ぶ人は少なくないと思うが、足りない低音域をサブウーファーで補うだけでも大型スピーカーに迫る迫力が得られるということが分かった。これはなかなか満足度が高い。また、小型スピーカーであれば壁掛け設置なども容易だ。サラウンド再生のハードルの高さも多少は緩和できるだろう。
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