iBeaconでできること、現状の利用例
iOS 7リリースから半年以上が経過し、開発者でも利用ノウハウが蓄積され始めたことで、急速にiBeacon利用が広まっている。先ほどの説明にもあるように、Beaconモジュールを設置して、それに反応するアプリを記述すればいいだけなので、比較的小規模なサービスでの導入事例が増えているのが特徴だ。Beaconモジュール自体も個々のロットは千〜数千円程度と気軽に導入可能なレベルのため、これも人気の秘密となっている。
ただ、iBeaconのベースとなっているBLE技術自体はiPhone 4Sですでに導入されていたもので、OSバージョンとしてはiOS 5の時点で利用可能になっていた。BLEでは短い情報を含んだ信号を定期送信する仕組みを採用することで、従来のBluetoothで問題になっていたバッテリー駆動時間の短さを改善することが狙いのひとつにあった。
また、GATT(Generic ATTribute)と呼ばれる標準プロファイルが複数定義されており、腕時計やランニングセンサーなどのデバイスとスマートフォンが、簡単に連携できるようになっている。
iBeaconの仕組みはこのBLEの基本機構を応用したもので、主に電波強度による距離測定の部分に特化している。一方で、Beaconモジュール自体は汎用のBLEデバイスが利用されているため、温度センサーなどを搭載して対応するGATTプロファイルを送信するよう設定するだけで、単純に位置情報の測定以外の機能も搭載できる。
「iOS 7」におけるポイント
Appleが「iBeacon」のキーワードをうたいだした「iOS 7」では、iOSが持つCore Location APIにBLEによる位置測定の機能が標準で組み込まれ、iOSアプリがBLEによる距離測定も含めた位置情報取得が可能になった影響が大きい。iBeaconとA-GPSによる位置測定のどちらでアプリが反応しているかわかりにくいからだ。
実際、Bluetooth機能をオフにしてiBeaconを利用しない設定にしても、アプリが反応することがある。Apple Storeの事例にあるように、店舗前を通過して対応アプリがポップアップするようなケースの場合、あくまでiBeaconは位置情報取得の補助的要素として用いられている感じだ。
そのため、iBeaconを“それらしく”使うにあたってはもう一工夫必要となる。例えば、店舗内にふたつ以上のBeaconモジュールを設置し、そこで得られる3つの距離の移動情報から表示させる情報を変化させるなど、より細かい誘導が可能になる。例えば、アパレルショップで女性物コーナーに近付くと、アプリで表示される情報ラインナップが変化するという具合だ。
また、決済やクーポン利用の場面では、NFCのように通信モジュールにスマートフォン端末を“タッチ”させることで、アプリックスの「MyBeacon touch」などのよに、実際に“タップ&ペイ”のような仕組みを擬似的に実現することも可能だ。
信号を出力する距離はあらかじめBeaconモジュール側で指定できるため、小売店などで近くを通る客を誘導させる場合には極力出力を上げておき(数十mなど)、店舗内の誘導では数m程度に距離を設定、さらに疑似NFCを実現する場面では「Immediate」よりさらに近距離の十数cm程度に設定しておくなど、アプリ設計とモジュール設置の際の一工夫でできることが大きく広がる。
とはいえ、現状のiBeaconの応用例の多くはApple Storeでのストアアプリとの連動のほか、MLBでの球場チェックインシステム、Macy'sでのShopkickアプリとの連携など、比較的にベーシックな誘導Beaconの仕組みにとどまっている。一方で、東京国立博物館の公式アプリ「トーハクなび」のように、展示室を移動すると案内アプリの表示内容が変化するなど、比較的進んだ誘導Beaconの事例もある。その意味では、iBeaconの活用はまだ始まったばかり……という状況なのかもしれない。
トーハクなび | |||
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価格 | 無料 | 作者 | National Institutes for Cultural Heritage |
バージョン | 2.0 | ファイル容量 | 36.9 MB |
対応デバイス | iPhone、iPad、iPod touch | 対応OS | iOS 7.0以降 |