東芝は5月16日、植物工場で生産する無農薬野菜を事業化すると発表した。今月上旬には富士通も同様な野菜出荷を始めているなど、半導体メーカーの野菜工場化・農業への進出が進んでいる。
東芝の植物工場は神奈川県横須賀市で遊休状態となってた同社施設を活用したもので、施設改築工事は開始されており、レタス、ベビーリーフ、ホウレンソウ、ミズナを閉鎖型植物工場で生産。本年度上期中には出荷を開始し、300万株/年の生産、年間3億円の売り上げを見込む。植物育成向けに最適化した蛍光灯や温度・室管理の空調機器、栽培状況を把握する遠隔監視システム、梱包材などを消毒する除菌システムなど、同社が半導体事業で培った生産管理技術を活用する。
菌の侵入を制限したクリーンルームで育成される野菜は雑菌による傷みが少なく長期保存が可能で、カット野菜やサラダ用をターゲットとしてスーパー、コンビニエンスストア、飲食業者などを中心に販路を拡大。育成環境の制御によりポリフェノールやビタミンCを豊富に含んだ機能野菜として市場ニーズに対応するという。また、本年度中には海外に新たに大規模な植物工場を建設するなど海外展開にも乗り出す。
東芝に先立った5月7日、富士通グループの富士通ホーム&オフィスサービスは5月7日の発表で、「会津若松Akisaiやさい工場」で栽培した「キレイヤサイ」シリーズを販売開始したと発表した。こちらも同社の半導体製造ノウハウを活かして会津若松の富士通セミコンダクター工場に閉鎖型大規模植物工場を建設、クリーンルームによる無菌環境で無農薬・低カリウムの高品質野菜を生産し、周辺の店舗や施設に販売開始している。
さらには4月中旬にはパナソニック(パナソニック エコソリューションズ)が「アグリ・エンジニアリング事業」を立ち上げることを発表している。こちらは実際に植物工場を運用するわけではないが、さまざまなセンサや機器の最適化計算により、現在の農業にかかるコストやエネルギーを減らすことを目的に半開放的ビニールハウスや関連機器の提供を行う。
植物工場による野菜はスーパーに並ぶほど一般化し、イチゴなどではブランド化されるなど高品質なものも販売されている。今後の農産物貿易自由化に向けて農作物の付加価値を高めた“最先端農業”は新たなメイド・イン・ジャパン製品として確立させておくべき事業と言えるだろう。