本当に世界の人たちに届けるなら、端末価格は15ドル
メッシュネットワークでネットを共有する技術も
2番目の「価格」は、言うまでもなくデバイスやデータアクセスなどのコストだ。現在インターネット普及が進んでいない途上国では、「食べ物や水など生きていくために必要なニーズとの選択肢になっていない」という。
Ericssonでは、途上国市場では高速ネットワークをすぐには構築できないという事情を鑑みて、既存の2Gや3Gを最大活用していくような技術開発にも継続して取り組んでいるという。電力問題についても、ネットワークとデバイスとの連携により消費を改善できることは多いとLaneri氏は述べる。同社は180ヵ国以上で展開しており、優れたユーザー体験を提供するために各市場で学んだことを貢献していきたいとした。
端末の価格はどうだろうか？ MWCではFirefox OSをプッシュするMozillaが、パートナーと25ドルの端末登場の見通しを示して話題となった。だが、25ドルでもまだ不十分なのだ。EricssonのLaneri氏は、「スマートフォンを（世界の）全員にとなると、15ドル程度まで下がる必要がある」と語った。
MicrosoftのSrikanth Raju氏
MicrosoftのRaju氏は、2月のMWCで発表した29ユーロの「Nokia 220」を手に、Facebookの統合、2.8型画面などの特徴と同時に、約30日というバッテリー持続時間を実現すると胸を張った。また、クラウドとキャッシュ技術によりデータの消費量を最大80％圧縮するなどの取り組みを紹介した。
端末の価格については、先にMicrosoftが発表した9型以下の端末向けの「Windows Phone」ライセンスの無償化を紹介し、「（Windows Phone）スマートフォンの価格は今後もっと下がる」と楽観視した。旧Nokiaデバイス事業はMicrosoftの下で再出発を切ったばかりだが、Internet.orgは継続して参加する模様で、Microsoftの新CEOが掲げる”クラウドファースト””モバイルファースト”を売り込んだ。
やや異色だったのがOpen Gardenだ。Internet.orgに加入はしていないが、インターネットを多くの人の手に、という点では同じ目標を掲げる。
元々はSkypeで「Skype Out」などの開発を手がけたOpen GardenのCEO、Micha Benoliel氏は、「我々のアプローチは異なる」と自社のソリューションを紹介する。
Open Gardenはワイヤレスメッシュネットワークを構築できるソフトウェアで、Androidモバイル端末、Mac、WindowsなどのPCに専用アプリをインストールすると、ユーザー同士で3G/LTEなどの無線ネットワークをWiFi／Bluetooth経由で共有できる。すでにアプリのダウンロードは500万に及ぶという。
Open GardenのMicha Benoliel氏
「Facebookにアクセスしたいが回線がないとき、隣の人を経由してアクセスできる。人が多いほど高速に、堅牢に、信頼性も高くなる」とBenoliel氏。ネットワークや設定の知識がないユーザーでも容易に利用できるようにソフトウェア側で自動的に適切なコネクションを選択したり、必要な機能をオン/オフにするようプッシュメッセージで知らせる。「難しいことを考える必要はない」とBenoliel氏。
同社が参加してインドで行った実験では、起業家や農業従事者1万人にOpen Gardenアプリが入ったAndroidタブレットを配布した。このうち50人が2Gなどのモバイル接続があるという条件で、最終的には10万台全部がインターネットに接続できたという。
同氏は「投資ゼロでできることはたくさんある。我々はソフトウェアを通じてアクセスを民主化する」と語る。インドの実験では多くの人がコンテンツにアクセスすることで広告やコンテンツ販売につながることから、ビジネスケースとしても実証されたという。
Benoliel氏は自社のソリューションを「崩壊的」「現実的なアプローチ」「コネクティビティーのクラウドソーシング」と形容する。先には、ネットにアクセスできなくてもユーザー同士でメッセージが可能という「FireChat」アプリをローンチしたという。Benoliel氏は、将来のインターネットについて、「相互接続された小さなインターネットがたくさんできる。人々は近所や家族などと自分のインターネットを拡大させていく。通信の崩壊が始まっている」と展望した。
