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ネットにアクセスできない世界の2/3へのFacebookの取り組みとは?

2014年05月13日 11時00分更新

文● 末岡洋子

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Facebookが主導する、世界の残りの2/3の人たちに
ネット接続を提供するプロジェクト「Internet.org」

 インターネットにアクセスできない、世界の残りの3分の2の人にモバイルインターネットを――野心的なプロジェクトが2013年に立ち上がっている。

 その名はInternet.org。主導するのはインフラベンダーでも端末ベンダーでもなく、あのFacebookだ。Facebookは5月6日まで、中国・北京で開催されたモバイルインターネットの業界イベント「GMIC 2014」にて、EricssonとMicrosoft Mobile(旧Nokia)といった共同設立メンバー2社、それにメッシュネットワークアプリを提供するベンチャーのOpen Gardenとともにパネルを開いた。

左からForrester ResearchのClement Teo氏、EricssonのJean-Christophe Laneri氏、Open GardenのMicha Benoliel氏、MicrosoftのSrikanth Raju氏、FacebookのPat Wu氏

 Internet.orgは2013年8月にFacebookが立ち上げたプロジェクトだ。立ち上げメンバーとして、Facebookのほか、無線インフラのEricsson、チップベンダーのQualcommとMediaTek、端末ベンダーのNokiaとSamsung、ウェブブラウザーのOperaの6社が名を連ねる。世界の人口の3分の2がインターネットにアクセスできないという現状を解決するのがミッションだ。

 パネルに登場したのは、Facebookの戦略・プランニングトップのPat Wu氏、Ericssonのモバイルブロードバンド担当ディレクター、Jean-Christophe Laneri氏、MicrosoftのAPAC担当開発者エクスペリエンス担当トップのSrikanth Raju氏、Open Gardenの共同創業者兼CEO、Micha Benoliel氏。Forrester Researchのシニアアナリスト、Clement Teo氏がモデレーターを務めた。

FacebookのPat Wu氏

 FacebookのWu氏は、インターネットへのアクセスが重要な理由として「ナレッジ経済への移行」を挙げる。「経済は現在、大きな変換を遂げようとしている。(石油やガスなどの)リソースベースからナレッジベースの環境が急速に進んでいる。知識があることが重要になり、これは大きなチャンスをもたらす」とWu氏は語る。「ナレッジ経済の長所は、だれでも参加できるということ」と続ける。このほか、人とつながることで得られる社会的メリット、そして雇用創出を挙げた。

 「だが、世界の状況をみると、インターネットアクセスは改善してはいるが、世界の79億人のうちインターネットユーザーは3分の1に過ぎない。そして、そのほとんどが成長国の豊かな人だ。Internet.orgでは、残りの3分の2をオンラインにするための課題を解決していく」とWu氏はミッションを説明する。なお、CEOのMark Zuckerberg氏は2月のMWCで、現在の状況では普及のための根本的問題が解決しておらず、なかなか加速しないと通信業界主導のアプローチを暗に否定していた。

 ではInternet.orgはどうやってこの問題を解決するのだろうか? Wu氏は「ネットワークへのアクセス」「価格」「認知啓蒙」の3点に取り組むという。

ネット接続はもはや基本的人権
ネットワークの負荷低減は途上国ではまだまだ重要

 まず、「ネットワークへのアクセス」は単にネットワークが張り巡らされているかどうかだけではない。国際電気通信連合(ITU)の調査では、2Gによるカバー率は人口の90%、3Gでは50%と必ずしも悪いものではない。だが、そもそも端末を利用するための電力が手に入るかなどの問題もある。「ネットワークよりも電力の方がむしろ大きい」問題なのだ。

EricssonのJean-Christophe Laneri氏

 「コミュニケーション(通信)は基本的人権と考えている」というEricssonのLaneri氏は、コスト効率に優れた方法でネットワークを人々の手に届ける必要があると述べる。現在20億人に満たないというスマートフォンユーザーだが、2019年には50億人に達すると同社は予想しており、「業界がエコシステムとして実現していくことが大切」と述べる。

 効率化という点では、FacebookのWu氏が自社の取り組みをいくつか紹介した。たとえばモバイルアプリの改良に継続的に取り組んだ結果、データ消費を半減させたという。「オンラインユーザーの半分がFacebookを利用している。我々のデータが半分になることは、ネットワークの負荷軽減に大きく貢献できたことになる」とする。

 Ericssonと共同で進めるイノベーションラボ(Innovation Lab)についても言及した。アプリ開発のメッカであるシリコンバレーだが、開発者は成長国のデバイスとネットワーク環境を想定して構築している。イノベーションラボはシリコンバレーにあるFacebookオフィスにあり、アプリ開発者は1カ所で2G、3G、Wi-Fiなど複数のネットワーク、各国固有の制限がある環境下で自分のアプリをテストできるという。

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