まずは携帯電話事業の回復を
だが、予断を許さない状況であるのは確かだ。
富士通が発表した2014年度(2014年4月~2015年3月)の業績見通しのなかで明らかにした携帯電話の出荷計画は、年間310万台。今年度も前年割れの計画としている。
山本社長は、「携帯電話の計画は、かなりシビアにみている」と発言。 「au向けにも、ソフトバンク向けにも供給するが、NTTドコモへの集中度を高めることになる」と説明する。また、欧州で展開しているらくらくスマホに関しても、「いまはフランスで細々とやっているが、これを一気に拡大するつもりはない。水が少しずつ流れていくようにジワジワと近隣諸国に浸透させていくことになる」と、海外展開も拡大路線には踏み出さない考えだ。
そして気になるのは、「30万台以下でも収益が確保できる仕組みを構築した」としながらも、2014年度の携帯電話の出荷計画は310万台としており、月産に換算すれば26万台規模に留まることだ。目標の月産30万台には届かない。これでは引き続き赤字計上の可能性がある。
だが、その点について、山本社長は次のように語る。
「携帯電話だけでは月産30万台には到達していないが、今回の生産拠点の統合によって、携帯電話とタブレットの生産拠点が同じになる。それを含めて月産30万台体制を維持する」と語る。
生産を統合した富士通周辺機は、タブレット、PC周辺機器、スマートフォンなどのユビキタス機器を製造する拠点であり、ロボットやICTを活用することで実現した、徹底した自動化が特徴だ。
富士通では、タブレットの出荷計画を明らかにしていないが、ここから逆算すれば、タブレットでは年間50万台の出荷を維持しないと、携帯電話事業およびタブレット事業の黒字化はままならないということになる。
2011年には国内トップシェア、2012年には第2位のシェアを維持していた富士通の携帯電話事業は、2013年は一気に6位にまで落ち込んだ。
出荷計画からすれば、2014年度もシェア拡大は難しそうだが、まずは赤字脱却への道筋づくりが前提だといえそうだ。
2014年度は、富士通にとって創立80周年の節目の年。携帯電話事業が回復する道筋を作れなければ、それが、今後の成長の足かせになりかねない。
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