四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第134回
インパルス応答を評価軸に置いた意欲的スピーカーはどうして作られたのか
いかに正確な音を出すか—パワードスピーカー「ECLIPSE TD-M1」の挑戦
2014年03月15日 12時00分更新
音楽を作る人にモニターとして使って欲しい
―― その過渡特性を重視して内蔵DACはオーバーサンプリングフィルターまで省いてますよね?
小脇 最近のカメラでもそうですけど、ローパスフィルターを付けるのか付けないのか、みたいな話です。192kHzでオーバーサンプリングすると、96kHzより上から折り返してきたノイズは少しあるんです。それが乗らないようにフィルターで落としていたんですが、そうすることで音の立ち上がり、立ち下がりが鈍ってしまう。でもオーバーサンプリングした段階で、可聴帯域に入ってくるノイズは非常に小さくなっている。だからなくてもいいんじゃないかということで。これでDAC、アンプ、スピーカーとトータルで音作りができたと思っています。
―― パソコン用のスピーカーとしては少々お高いですけど、セットアップを考えずに使えるのはいいですね。
小脇 場所も取らないですからね。そうそう、これを作った狙いがもうひとつあるんです。これが制作側のリファレンスになれば、世の中のレコーディングがもっとよくなると思うんです。USBでつないでしまえば、Pro Toolsの出力もそのまま出せるので。
―― モニターに使ってくださいということですね。
小脇 ええ。僕が家で音楽を聴いていて、この演奏も録音がよければ、もっとよかったのにと思う作品が山ほどあるんです。だから、みんながこれで音楽を作り始めると、音楽のクオリティーも上がり始める。今までは、どこのスタジオに行ってもニアフィールドモニターはヤマハのテンモニ(NS-10M)だった。でも今は、スタジオじゃなくて宅録する人が多い。そういう人の横に、このスピーカーがある。そういう世界を作るのが僕の夢です。
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FUJITSU TEN TD-M1(1Pair)FUJITSU TEN
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター、武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。インターネットやデジタル・テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレ。
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