Googleの姿勢は矛盾している?
Edelman氏はいくつかの点からGoogleの態度の矛盾点を突く。たとえばAndy Rubin氏。まだAndroidを統括していた2011年に「デバイスメーカーは自由にAmdroidを改変してあらゆる範囲の機能にカスタマイズできる」と語っていたと、Edelman氏は指摘する。
Rubin氏は「Android互換もしくはGoogle Applicaitonsを統合したいなら、基本的な要件に従う必要がある」と付け加えてはいたが、「Androidはオープンなプラットフォーム」と大々的にうたっていることからは想像できないレベルの“基本的な要件”だとEdelman氏は問うている。
もう一つ取り上げているのが、会長であるEric Schmidt氏の発言だ。2011年にGoogle検索の独占状態について調べていた議員の「Androidの利用の条件としてGoogle検索をデフォルトにするよう端末メーカーに要求しているのか?」という問いに対し、Schmidt氏は「Androidの利用条件としてGoogle検索をデフォルトにするようなことを強いてはいない」と回答している。
そして、Androidのメリットの1つに「アプリケーション開発レベルでの競争を奨励すること」を挙げており、「メーカーがどのアプリをAndroid端末に事前インストールできるのかを選択できる自由を尊重している」「Androidへのアクセスや利用にあたって、Google Applicationsの事前インストールやデフォルトの検索エンジンにすることを条件にしていない」と続けている。Bingなど競合アプリの導入も自由だとSchmidt氏は主張したという。
Edelman氏はこのようなGoogleの矛盾をつきながら、MADAで要求していることは“紐付け”だと主張する。YouTubeだけを利用したいのに、Google Mapsなどのアプリを入れなければならない……全部Googleアプリで揃えるか、全部無しかを選択しなければならないというのが現状のようだ。
端末メーカーの中には自社でサービスを開発しているところはそれを使い、無いものはGoogleで補いたいという場合もあるが、MADAから判断する限りAndroidでは難しい。さらには秘密にしてきたことで、オープンという表向きのイメージとの矛盾を問われることなく戦略的な目標を進めていったと分析している。
端末メーカーが欲しいのは
Androidの商標とドロイド君のイラスト?
もっともメーカーが独自にアプリを揃えられるのであれば、MADAは不要だ。実際にAmazonのKindleや中国のAndroidメーカーはこの方法を選んでいる。
FOSS PatentのFlorian Mueller氏はこのような条件の悪い条項を飲むメーカー側の心理として、Google製のアプリやアプリストアが必要という以外に、「商標が欲しいため」と分析している。開発者はもちろん、消費者の間で「Android」ブランドの認知は高い。商標はオープンソースライセンスには含まれていないため、Googleと契約したうえで、Androidロゴをマーケティングに用い、自社の端末がAndroidであることを消費者に伝えている。
Googleは先にオンライン広告で欧州委員会(EC)と和解したばかりだが、これとは別にEUではAndroidの独占禁止法違反について暫定調査が進んでいる。今回明らかになったMADAが何らかの影響を与えるかについては、まだわからない。Edelman氏の書類公開を報じたWall Street Journalでは、初期設定をどのぐらい簡単に変更できるのかにより、ECの見解が違ってくるだろうとする専門家の意見を示している。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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