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新しいモバイルOS&スマホ「Jolla」が目指すものは何か?

2014年02月03日 20時15分更新

文● 末岡洋子

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――欧州の次の市場はどこになるのでしょう?北米市場での発売予定は?

 次はアジアに拡大したいと思っている。現在、香港と中国で端末販売に必要な認定を申請しているが、プロセスに思ったよりも時間がかかっている。認定を得られたら販売を開始する。同時に現地のキャリアなど提携も進めている段階だ。販売では中国最大手の販売店であるD.phoneと提携しているが、キャリアも重要だ。端末をローカライズするということは、単に端末の言語を翻訳することではない。香港ではオープンチャネルになる予定。香港にはすでにJollaオフィスがあり、関心も高い。

 すでに販売している欧州では、キャリアの提携を増やしたい。現在、話を進めているところだ。

ハードボタンは一切ない。“アプリケーションカバー”とよぶ四角いグリッドの中でアプリが動く

実質半年で新しいモバイルOSを立ち上げ
新しい選択肢は必ず求められる

――2013年はJollaのほか、Firefox OS、Tizen、Ubuntuと4種類の新しいOSが名乗りをあげました。そのうち端末が登場したのはJollaとFirefox OSで、先行したFirefox OSは6ヵ月以上販売されていますが、まだ大きな成功には至っていないようです。Windows Phoneもシェアの伸びが遅く、AndroidとiOSが9割を占めるスマホ市場に新しいOSが入るのは簡単ではないように見えます。

 Jollaはハイエンド体験にフォーカスしており、Firefox OSとは位置づけが異なる。私が理解している限り、Firefox OSはフラットな体験にフォーカスしており、主としてアプリケーションを利用できるスマートフォンのようだ。一方で、Jollaはすべてのエコシステムを活用するデバイスを目指している。Androidアプリ、HTML5アプリ、QTネイティブアプリなどが動くし、Sailfish OSはほとんどすべての端末で動く。Nexusなど他の携帯電話でも簡単にSailfish OSを動かすことができる。これは大きな差別化だ。

 重要なことは、現在のスマートフォン市場には選択肢が少ないということ。車の世界にたとえるなら、フォードとトヨタしかないという状況だ。違いや選択肢があることは大切だ。

 我々はソニーやSamsungなどのメーカーと協業する。自社でも端末を作るが、(メーカーと)競合しているのではなく、これらのデバイスメーカーをサポートする立場にある。Jollaは従業員が100人程度の小さな企業で、大手メーカーと競合する体力もない。コンバージェンスが進んでおり、この戦略は十分に可能だ。

 2000年初めにカメラ付きの携帯電話が登場したが、今度はカメラがインターネットなどとの接続性を提供するOSを必要としている。TVも同じだ。これらの家電製品が融合する中、ユーザーはこれらを活用できるプラットフォームがない。Jollaなら、どのベンダーの端末や製品を使っているかを関係なくデジタルライフを実現できる。

――どうやってそのコンセプトをコンシューマーに伝えるのでしょうか?

 まずメーカーからスタートし、コンバージェンスのチャンスがあると説明する。われわれはスケジュール通りに6ヵ月で世界レベルのスマートフォンを作成した。これはとても重要なことだ。Sailfish OSはコラボレーションができるOSで、メーカーは自分たちのサービスを統合してカスタマイズできる。

 私は10年以上ソフトウェア構成管理を担当しており、どうやって機能を取り込むか、定期的にアップデートするか、コードを提供するのかを熟知している。Androidは分断化によりシェアを拡大できたが、GoogleはAndroidのコントロールを強めているという指摘もある。Sailfish OSならメーカーはJollaと同じソフトウェアアップデートを受けられる。

 次にコンシューマーにリーチする。新しい選択肢を提供する端末があると提案する。もっと簡単に、効率よくデジタルライフを利用できると説明していく。Jollaはハードウェアもハイスペックだが、ソフトウェアのパワフルさが群を抜いていると自負している。

――Sailfish OSを搭載する端末メーカーはいつ頃登場すると期待できますか? 多くのベンダーが無料のAndroidを選んでいますが、状況が変わりそうですか?

 最初のJollaをリリースした後、話が急ピッチで進んでいる。2013年はSailfish OSがどんなものかのビジョンを話した。我々は予定通りに最初の端末を実現した。メーカーはこれをちゃんと評価しているようだ。

 コストは確かにAndroidを選ぶ要因の1つかもしれない。だが、Androidスマートフォンは収益性が高いとは思えない。端末はすべて同じで差別化が難しい。現在のAndroidスマートフォンは外観がどこも同じにみえるが、今後これが急速に変化する可能性があると思う。人々は選択肢がないという現状に気がつき、転換点を迎えるだろう。

 iPhoneが登場したのは7年前。それ以前のスマートフォン市場は違った。Symbianを使って、メーカーはそれぞれ異なる携帯電話を作っていた。Symbianは機能的にはリッチだったが、そこにAppleがやってきて3Gではない電話、解像度の低いカメラ、それほど高機能ではない端末を見せ“これがスマートフォン”といった。実際、iPhone登場時にはアプリのエコシステムもなかった。だがすぐに市場が変わった。Symbianにはたくさんのアプリがあったのに、突然変化が起こった。

iPhoneがスマートフォンの市場を転換した
しかし、その次の転換点はまもなくやってくる

――だが人々はSymbianの多機能よりもiPhoneを選んだ。なぜでしょうか?

 2つある。1つ目はハイプで、2つ目はAppleが持つ“クール”さ。私自身、6~7歳の頃にApple IIに出会いコードを学んだ。Appleは常にクールなファクターがある。iPhoneもそうで、簡単に使えた。一方で、SymbianはiPhoneよりパワフルだったが、必ずしも簡単に使える電話というわけではなかった。

 AppleはiPhoneでハイマージンのデバイス事業とアプリストアというビジネスモデルを作り上げた。これをみたGoogleがAndroidを作り、2社が(その前にすでにたくさんのスマホがあったが、)スマートフォンを新たに定義した。

 市場は次の転換点を迎えることになるだろう。再び変化があると信じている。

――その転換点はいつになるのでしょう?

 この1~2年ではないか。Jollaには素晴らしい資産があり、その一部となる良いポジションにあると思う。

 UbuntuやFirefox OSは新しいが、Jollaには以前から携帯電話業界にいる人ばかりが集まっている。携帯電話を作成するノウハウや知識がある。これは簡単に得られる知識ではない。OSを開発しているだけでなく、ハードウェアへの統合、コンシューマー家電の作成を目指している。その証拠に、初代のJollaは洗練された端末になった。

 確かに小さなプレイヤーだが、機敏に動くことができる。すばらしい成果をだすことができるだろう。次になにが起こるのか、とても興奮している。

――2台目の登場など、今後の予定は?

 昨年春にロードマップをつくり、その通りに進めている。2台目に向けた作業もあるが、いま最も重視していることは、初代Jollaを購入したユーザーに価値をしっかりと提供すること。バグを修正し、ソフトウェアアップデートを行い、ユーザーが望んでいる機能を届けることにフォーカスしている。

 同時に、Other Halfのエコシステム立ち上げも進める。Other Halfコンセプトのコンテストを実施しており、ワイヤレスチャージ、QWERTYキーボードなどのアイディアが出てきている。

 素晴らしいプラットフォームができた。何年もの間、たくさんの端末の開発に関わってきたが、やっと拡張性があり潜在性の高いプラットフォームを作ることができたと自信をもっていえる。


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