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本質を捉えていないビエラCM拒否報道

2013年07月30日 07時03分更新

文● 寺林 暖(Dan Terabayashi)/アスキークラウド

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 7月24日に発売された、テレビをスマートテレビ化するグーグルのスティック型端末「クロームキャスト」。35ドル(約3500円)という値段の安さもあってかたちまち大人気となり、販売していたアマゾンでは売り切れ、購入者向けサービスとして付いていた動画配信サービス「ネットフリックス」の3カ月無料キャンペーンは予想以上の反響で提供を終了してしまった。

クロームキャスト売り切れを示す米国のアマゾンの販売ページ(7月29日時点)

 かたや日本市場におけるスマートテレビの状況を見てみれば、最近話題になったのはパナソニックのプラズマ・液晶テレビ「スマートビエラ」のCM放映拒否問題。民放連の井上 弘会長の7月18日の定例会見でも、記者から本件についての質問が飛び、井上会長からは「広告主各社と会員各社の営業に関わる契約関係の話でコメントする立場にない」との見解が出ている。一連の報道で取り上げられているのはもっぱら、スマートビエラの「マイホーム」機能について、番組放送とインターネットの情報を同時表示する仕様がルール違反とされたなど、CMが放映されなかった日本のテレビ業界事情についての話題ばかりだ。

 だが「番組と直接関係ない情報を同時に表示することは望ましくない」というガイドラインにスマートビエラが抵触したとして、そもそもなぜパナソニックは、ガイドラインに抵触するような製品を発売したのか?

 テレビ事業をグローバルに展開する家電メーカーにとって、日本は小さな、特殊な市場だ。米NPDディスプレイサーチ社調べによれば、2012年のテレビ国内出荷台数は約600万台。対して北米は約4300万台、欧州にいたっては約5200万台にも上る。

 市場規模が大きいとはいえ、そこでの競争は激烈だ。2012年の薄型テレビの世界シェアでは、トップがサムスンで27.7%、2位にLGエレクトロニクスが15%。大きく差をつけられて3位以下にソニー(7.8%)やパナ(6.0%)、シャープ(5.4%)といった日本企業の名前が並ぶ(米NPDディスプレイサーチ社調べ)。

 インターネットでの動画配信やライブ放送がサービスとして定着し、テレビのネット接続率が高い欧米諸国ではスマートテレビは一般的。サムスンやLGといった巨大なメーカーを相手に、この市場に向けて、パナがスマートテレビ戦略として打ち出したのが、パーソナライズ機能とカスタマイズ機能で新しい視聴体験を提供する、「Your TV」コンセプトに基づく「マイホーム」機能だ。

パナソニックのウェブサイトの「2013 International CES 津賀社長 オープニングキーノートスピーチ要旨」。「Your TV」のコンセプトについても触れている。

 テレビ本体の「スマートテレビ化」を進めて訴求する家電メーカー。低価格なスティック型端末で、テレビを次々と「スマートテレビ化」していくグーグル。ネット親和性を高めるテレビが行き着く先は、一国の業界事情とは関係なく繰り広げられる、グローバルプレーヤーたちの草刈り場だ。

 スマートテレビ先進国である米国では何が起きているのか。そして、グーグルをはじめとするグローバルプレーヤーの進出は、日本のテレビ業界にどのような影響を与えるのか——その答えは、本日18時半から放送されるニコニコ生放送で確認してほしい。議論の先に、「テレビの新しい成長時代」が見えてくるはずだ。

アスキークラウド創刊記念ニコニコシンポジウム
どーする!? どーなる!? スマートテレビ
「グーグルも狙うテレビ業界」

7月30日(火)18時30分~19時30分(予定)

【視聴アドレス】

【出演者】

志村 一隆 (情報通信総合研究所 研究員)
小笠原 陽一 (総務省 情報流通行政局 情報流通振興課長)
川上 量生 (株式会社ドワンゴ代表取締役会長)
角川 歴彦 (株式会社KADOKAWA取締役会長)
中野 克平 (アスキークラウド編集長)


【番組内容】

<第1部>
テーマ: 「2021年、ネットがテレビ広告を抜く」
「スマートテレビはテレビを超えるか?」

出演者: 志村 一隆 (情報通信総合研究所 研究員)
角川 歴彦 (株式会社KADOKAWA取締役会長)
中野 克平 (アスキークラウド編集長)


<第2部>
テーマ: 「日本、アメリカ、イギリスのテレビ」
「著作権の黒船『ウルトラバイオレット』」

出演者: 小笠原 陽一 (総務省 情報流通行政局 情報流通振興課長)
角川 歴彦 (株式会社KADOKAWA取締役会長)
中野 克平 (アスキークラウド編集長)


<第3部>
テーマ: インタラクティブセッション
「テレビの新しい成長時代」 「エコシステム2.0」

出演者: 川上 量生 (株式会社ドワンゴ代表取締役会長)
角川 歴彦 (株式会社KADOKAWA取締役会長)
中野 克平 (アスキークラウド編集長)

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