Broadwellをデスクトップで投入しないのは
低速・低消費電力のモバイルを優先するため
全体の動きをまとめたところで、Broadwellがデスクトップでスキップされた理由を説明する。インテルはこれまで新しいプロセスノードを投入する場合、まずハイスピードロジック向け、次がシステムオンチップ向けという順番だった。
たとえば32nmだったらまずハイスピードロジック用のP1268をCPU向けに開発、ついでこれをシステムオンチップ向けにカスタマイズしたP1269を翌年リリースという具合だ。
22nm世代に関してもこれは継承されたが、P1270→P1271の後で、再びP1270を省電力方向に振ったP1270 v2をリリースしたあたりからやや雲行きが怪しくなり、そして14nm世代ではP1272がシステムオンチップ向けにまずリリースされ、ハイスピードロジック向けはP1273ということで2015年度にずれ込むことになってしまった。
なぜでこうなったかといえば「一番数量の出るSKUが、従来のデスクトップ/サーバー向けからモバイル向けに切り替わってきたから」である。
図2 トランジスターの動作周波数と消費電力の関係
図2は説明が必要だろう。上側の図は、あるプロセスノードにおけるトランジスターの動作周波数と消費電力の関係を示したものだ。トランジスターを高速に動作させる場合、当然消費電力は増加するのだが、その関係は直線的ではなく、図2の上側にあるような曲線を描く。そこでこのカーブの中から適当に数ヵ所(最近のCPUの場合3つが多い)の特性を選び(上図で赤丸の箇所)、それを実際にCPU内部のトランジスターとして利用する。
具体的には、2次/3次キャッシュなどのやや低速でも良いところは、速度は遅いが消費電力が低い特性のトランジスターを、性能で肝になる部分には消費電力が多くても速度の速い特性のトランジスターを、その他の箇所には中間の特性のトランジスターを使うわけだ。
ただ、そうした作り方をしても、製造時のばらつきなどがあるため、動作周波数とYield(取れる比率)の関係は図2下側のような正規分布になる。ここで、中心周波数のものを一番メインに売るところ(従来だったらCore i3~Core i5のミドルレンジ)にあて、高速で動作するものはCore i7などのハイエンドを、低速で動作するものはCeleronやモバイル向けに割り当てていた。この図式は、デスクトップ/サーバー向けが一番数量が出ていた時代には問題がなかった。
ところが昨今はご存知の通り、デスクトップ向けの伸びは停滞しており、むしろモバイル向けの需要の方が活発である。サーバーについても、かつての高速・高消費電力の製品よりも低消費電力の製品の方が多く出ている。
結果、図2の中心周波数をもう少しモバイル向け、つまり低速・低消費電力の方に振らないと、モバイル向けに必要な数量が確保できず、その一方であまりニーズのないデスクトップ向けが過剰になる、という状況に陥る。
そこで、最高動作周波数を変えないまま、トランジスターの特性をやや低速・低消費電力の方向に振ったのがHaswellで採用されたP1270 v2というわけだ。
ただ、これでもまだ消費電力の低減には十分ではない。そこで、完全に使うトランジスターの特性をモバイル向けとデスクトップ向けで分離してしまったのが14nm世代となる。まず最初に登場するP1272は、低速・低消費電力に振ったものになり、次に登場するP1273は高速・高消費電力に振ったものになる。これを模式図化したのが図3である。
図3 P1272/P1273での動作周波数と消費電力の関係
赤い線がP1272を、緑の線がP1273を意味しているが、デスクトップとモバイルで完全に製造プロセスを分離しないといけないほど、消費電力削減へのニーズが高まったというわけだ。

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