今回と次回は、今年1月にラスベガスで開催されたInternational CES 2013で発表したインテルとAMDのロードマップアップデート、およびいくつかの新情報をまとめてお届けしよう。まずはインテル編だ。
International CES 2013のレポートそのものはASCII.jpの記事にまとまっている。また週アスPLUSでもやはりレポートが出ているので目を通された方も多いだろう。インテルのプロセッサーを搭載した各社製品の話を抜きに、純粋にインテルのプロセッサーのみに話を絞ると、大きく3つの話が今回アップデートされた。消費電力が7WのIvy Bridge、Haswell、それとBay Trailである。これらを順に説明しよう。
消費電力7WのIvy Bridge
昨年のIDFで、タブレット向けなどに向けてHaswellベースでTDPが10Wの製品をリリースするという発表は既になされていた。そして今年のCESにおいては7Wの製品が発表された。具体的に言えば、Core i3-3229Y(3MB Cache, 1.4GHz)とCore i5-3439Y(定格1.5GHz/最大2GHz、キャッシュ3MB)、Core i5-3439Y(定格1.5GHz/最大2.3GHz、キャッシュ3MB)の3製品が、この7W製品群に相当する。
識別のため、型番の末尾にYをつけたので、ある意味わかりやすい。ところでこれらの製品の7Wというのは、なにが7Wなのだろうか。上の画像では7Wに*印が付いているのが確認できる。そのスライドをもう少し大きくしたのが下の画像だ。
注意書きに「7WというのはScenario Design Powerの数字」だと表記されている。このSDP(Scenario Design Power)とはなにを指しているかが問題だ。この3製品を「ark.intel.com」で確認すると、Max TDPは13Wと示される。これは、従来一番消費電力が低かった型番末尾にUが付くモデルの17Wよりもやや低いが、それは動作周波数を落としたためである。13Wは十分低いとは言え、SDPの7Wにはまだ大分開きがある。
結論から言うと、SDPとは「インテルが想定する、あるシナリオを利用した場合の平均消費電力」である。しかも「そのシナリオは非公開」とされる。なんというか、昔AMDが提唱したACP(Average CPU Power)を彷彿させる数字だ。端的に言えば、既存の超低消費電力向けプロセッサーを、更に動作周波数を下げたうえで、「タブレットなどで利用する軽めの負荷を利用した場合の平均消費電力は7Wです」と言っている以上のものではない。
この数字が微妙なのは、タブレットなどの薄型機器の場合、そもそも熱容量的にゆとりが非常に乏しいからである。間違ってCPUの負荷が100%に張り付いた状態で暴走したりすると、タブレットが手で触れなくなるような事態も想定できる。何しろインテルがSDPの定義とか、SDPを利用する機器の要件などを一切公開しないので、このYシリーズを採用する製品はプロセッサーが13W相当の発熱を想定して放熱設計をする必要があるのか、温度を監視して一定のしきい値以上になったら機器側で意図的に動作周波数を絞る必要があるのか、それとも本当に7Wのまま設計すればいいのかは現状不明のままだ。
さらに加えるならば、Haswell世代はTDPが10Wなうえ、1つのチップに必要な機能すべてを実装するのではなく、マルチチップモジュールの形でPCHまで統合している。Ivy Bridge世代の場合はPCHが別に必要になるため、CPU+PCHのトータルSDPというものがもしあるとすれば、恐らくHaswell世代と大差ない10W近辺に落ち着くと思われる。
これらのことから、「Haswellはもう少し後になるので、それまでの間の繋ぎとしてIvy Bridgeベースの製品を用意したが、13Wという数字ではあからさまに見劣りするのでSDPという新しい指標を用意し、これを7Wに押さえ込んだ」というのが正直なところであろう。
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