起爆しないWindows Phone
シェアは2%台
改めて書くまでもないが、インターネットにアクセスする端末がデスクトップPCからスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末にシフトしている。PCの縮小を告げるデータはいくつかあり、たとえばGartnerのレポートでは、2013年第1四半期のPC出荷は前年同期比11.2%減少と報告している。
PCで独占を謳歌してきたMicrosoftにしてみれば、Androidの独占状態は目の上のたんこぶどころか、死活問題にもなりうる。そのMicrosoftはモバイルOS「Windows Phone」を持つが、Windows Phoneはそれほどの伸びを見せていないのが現状だ。
東欧などの一部市場では人気があり、明確なナンバー3のOSになったとするレポートもある。だが、Nokiaを手下につけても起爆にはほど遠い状態だ。MicrosoftとNokiaが提携した直後(2011年3月)、IDCは2015年のスマホOSのシェア予想として、Androidが45.4%、Windows PhoneはiOSをおさえて20.9%のシェアをとり、2位に浮上すると予想していた。
だが、2015年まであと2年となった現在Androidは圧勝している。IDCが2月に発表した2012年第4四半期のシェアでは、Androidは70%を上回り、Windows Phoneは2.6%で4位。Windows Phoneの成長は前年同期比150%増で拡大したが、Andriodも88%増で成長、差は縮みそうにない。
もちろん、Androidの独占を快く思わないのはMicrosoftだけではない。2月のMobile World Congressでは「Firefox OS」などいくつかの最新OS(どれもオープンソース)が話題をさらったが、パイプ役に回されスマホ景気の恩恵になかなかありつけないオペレーターの不満を感じた。
サービス側はAndroidをうまく活用しようとする動きが目立つ。たとえば、Amazonは「Kindel Fire」でAndroidをフォークし、Facebookは4月初めにAndroidスキン「Facebook Home」を発表した。なお、「Google Play」からダウンロードできるFacebook Homeはホーム画面を乗っ取ってしまうので、Googleのサービスは存在感をなくすことになる。これは当然、Googleのモバイル検索・広告に影響を与えるだろう。Googleだけでなく、サービスやUIでも存在感を出そうと考えているデバイスメーカーにとっても、Facebook Homeは付き合い方に悩むサービスのように見える。
このように、モバイル分野は高速に動いており、Androidのシェアがこのペースで拡大することが誰にも予想できなかったように、Facebook Homeが広まればAndroidの独占に対する懸念は的外れな議論になる可能性がある。
ちなみにiPhoneに対しても苦情
MicrosoftはスマートフォンではNokiaと提携し、タブレットでは「Windows 8」を搭載した自社ブランド端末「Surface」などの戦略を展開しているが、これといった結果が出ていない。Windows Phoneのシェアが何故なかなか伸びないのかについては人によって見解が異なるところだろうが、モバイルでのMicrosoftが展開するマーケティングや政治戦略はやや苦しさを感じる。
FairSearchを経由したMicrosoftの主張を聞いて、Windowsとブラウザー「Internet Explorer」のバンドルを思い出された方もいるだろう。MicrosoftはEUから競争法違反と判断され、ブラウザー選択画面を提供するなどの和解を行っている(だが、その和解条項に従わなかったとして、3月に制裁金を命じられたばかりだ)。
FairSearchに加え、Facebook Homeが人を中心としたコンセプトをアピールした際には、ブログにて「われわれはWindows Phoneで、2011年からPut People Firstをうたっている」と口を挟んでいる。
なお、EUに対しては3月末、「iPhone」でAppleがオペレーターに対して突き付ける契約についても苦情が上がった。今後、正式な調査になるかどうかが注目されている。ではMicrosoft、いやFairSearchの苦情が正式調査に至るのか。EUの競争担当委員、Joaquin Almunia氏はFairSearchからの苦情を受け取っていることを認めているが、その後については言及していない。
それにしても訴訟に規制当局とモバイルの覇権争いは多面にわたり、複雑さが増す一方だ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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