フィルムが劣化する前にデジタル化しよう
【ツンデレBD】フィルムをデータ化して保存しよう
2012年12月04日 11時00分更新
ツンデレ少女、宣言する
「やった、できたわ!」
古いフィルムをデータ化し、配るためのディスクに焼き終えた私は歓声を上げた。 その隣で赤司は改めてモニタ上の写真を眺めている。
「ほとんどは家族写真ですね」
「そりゃそうよ、押し入れから出てきたんだし。昔、お爺ちゃんが友達と旅行に行ったときなんかのもあるけどね」
「あ、もしかしてこれは小さい頃の葵さ……」
うぎゃあああああああああ!!
「がふっ」
哀れ、赤司は私の渾身のタックルを食らい、壁まで吹っ飛んで床に転がった。
あ、危なかったわ……。そしてパソコンやスキャナーを壊さなかった私を誰か褒めて。
「僕はパソコン以下ですか……」
ややあって、赤司はふらふら立ち上がった。意外と頑丈ね、ちっ。
「あんた、この間さんざん人のこと追っかけ回しておいてそれだけじゃ不満なの!?」
先日、こいつは『私を見ているのは楽しかった』と言った。
私に弁当箱を返す機会を窺っていたらしいんだけど、そのせいで私自身も覚えていないような細かな失敗をさんざん並べ立てられたし。その上こんな秘蔵写真まで!
私の叫びに赤司は目をぱちくりとさせてから、
「ああ、そう取られたんですね……」
なぜかがくりと肩を落とした。
「僕が葵さんを目で追うようになったのは、もっとずっと前です。一緒にクラス委員になってから……いや、一年生の頃、テストの上位者名簿の前でやたら悔しがってる人を見かけてから」
「悪かったわね!」
なんでそんな前のことから覚えてるのよ。ストーカーか!
「葵さんは小さなことで一喜一憂して、それがとても楽しそうで、いつも気になっていました。……僕と違って」
私からすれば、この赤司という男こそ人生イージーモードだと思ってた。
家は大金持ちという噂で、全校の女の子たちからきゃーきゃー言われて、勉強も運動もなんにも苦労してないって感じでさらっとこなして、でも周囲とのトラブルもなく学校生活を過ごしてる。
それを人は、天から三物も四物も与えられた人間と言うのだろうと。
──でも、それが楽しいかと言われれば話は別よね。
なるほど、そんな人間から見たら確かに私は面白かったでしょうね。いつもばたばたと走り回って、わからないことだらけで、こいつみたいにスマートにはいかない。ちょっと自分で言ってて虚しいけど。
「……なら」
今まで何度も、この生徒会準備室で教えてもらったものね。
お手製の弁当で満足しないなんて贅沢な男もいたものだわ。今回また手伝わせてしまったし、追加でお礼をくれてやるわ。
「今度の試験、私があんたをぶち負かしてあげるわ」
そして打ちのめされて、ひとつでも何かを得るといい。
……ちょっと『お礼』の意味が違う気もするけど。
つづく
著者紹介――藤春都
ライトノベル書き。筑波大学図書館情報専門学群卒。特技は本を腹の上に載せたまま寝ること。企画書を没られたりプロットを没られたり細かな記事を書いたり色々してます。単行本は『ミスティック・ミュージアム』(第二回ノベルジャパン大賞<佳作>受賞作)、『空想/のべりずむ』、『瑠璃色の刃と朱色の絆』(すべてホビージャパンより刊行)。新作『天帝学院の侵奪魔術師《ドメインテイカー》』(HJ文庫)が発売中!
イラスト――花園あずき
ドレスと猫をこよなく愛する漫画家。ペンネームが微妙に変わりました。単行本に『小公女(マンガジュニア名作シリーズ)』(学研教育出版)。『はやげん! はやよみ源氏物語』(新書館)が発売中!
ブログ『本当は萌える!源氏物語』では、源氏物語の漫画を連載中。twitterは@genjihikaru。
~前回のあらすじ~
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