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あのすべり台も体験した!緊急着陸訓練をJALのCAに学ぶ!

2012年11月23日 14時00分更新

文● 藤山哲人

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教官に質問!
あまり知られていないCAアレコレ

 最後は訓練教官にインタビューする時間があったので、アレコレ聞いた話をQ&A形式で紹介しておこう。

Q)「セレクターレバーをオートマチック・マニュアルに切り替える」ってどういう意味?

 旅客が全員乗り込み、ボーディングブリッジが機体から離れようとすると必ず聞かれる「客室乗務員は、セレクターレバーをオートマチック(エアバス系の機体はアームド)に切り換えてください」という業務放送だ。目的地に着くと、オートからマニュアルに切り替える。

 教官の話によると「駐機中はマニュアルにしてドアを手動で開き、運行中はオートに切り替える」という。さらに詳しくオートとマニュアルの違いについて聞いてみた。「飛行機のドアは下部が出っ張っていますが、そこにはスライドが格納されています。セレクターレバーをオートにすると、スライドを格納している出っ張りが床にロックされ、ドアを開けるとスライドが自動的に展開するようになるのです。また訓練時にはドアを手で開けていましたが、緊急時には自動で開くようになっています。通常時、お客様が乗り降りするときには、マニュアルにします。こうすると出っ張り部分がドア側にくっ付き、ドアと一体化します。そのためドアを開けてもスライドが展開しないのです」

ドア下部の出っ張りにスライドが格納されている。CAの顔の部分にあるのがセレクターレバーで、オートにすると出っ張りが床に固定され、ドアのみが開きスライドが展開する。マニュアルにすると、搭乗時のようにドアに出っ張りがついた状態で開く

 つまりオートマチックとは、脱出用のスライドが自動的に展開することと、自動でドアが開くモードということだ。訓練風景のムービーでも、ドアのモードを確認している様子が写っているので、もう一度見直してはいかがだろう。

Q)今回体験した以外の訓練もあるの?

 今回はあらかじめ地上や海上でそれぞれのアクシデントが発生することが分かっている状態だ。そのため、ある程度心構えができるというもの。しかし訓練には、どんなアクシデントが陸や海のどこで起こるか一切告げられず、その場で教官がシチュエーションを伝えるという訓練もある。

 教官がドア横に立ち、状況を告げると間髪あけずに状況に応じた対応をする様子を見たが、まるで九九の暗算のように体が反応しているとしか思えない。それだけ徹底的に訓練を仕込まれているというのがよく分かるシーンだ。

 また火災に備えた訓練も行なっているという。昔はギャレイ(CAが調理をするキッチン)などで電気系統が原因の火災を訓練していたが、機内が全面禁煙になったことでトイレで喫煙をする心無い乗客に備えるため、トイレからの火災も訓練のメニューに入っているという。さらに最近はノートパソコンを機内に持ち込む乗客も多いので、パソコンのバッテリーから発火した場合なども想定しているとのこと。

 教官曰く「時代や状況に応じて、訓練メニューを柔軟に変えています。またケガをしたお客様がいらした場合にはファーストエイド(初期治療)を施す訓練もします」ということだ。おそらく考えうる限りの訓練メニューがあるのだろう。なおテロなどに対する訓練を聞いたところ、保安の訓練については一切公開することができないと付け加えていた。

Q)CAの資格や昇進にはどんなものがあるの?

 記事中でも少し触れたが、CAには資格があり訓練・試験にパスしなければ乗務できない。新人CAからベテランになるまでの資格や昇進などを聞いたところ、教官はこのように教えてくれた。

 「新人のCAは、まずボーイング767や777のように多く使われている機体から資格を取ります。訓練では徹底的に教え込みます。その後OJT(企業内教育)などでベテランCAと国内線業務をこなします。JALという会社がら、国際線乗務を希望する者も多いのですが、数年は国内線業務をこなし、その後試験にパスすることで初めて国際線の乗務となるのです。また飛行機には、エコノミーやビジネス、ファーストクラスがありますが、それぞれをステップアップして資格を取得します。国内線と国際線ではサービスや乗務時間も違いますので、学ぶことがどんどん増えていくというわけです。さらに(保安の観点から)陸からどれだけ離れた空路を飛ぶかという違いでカテゴリー1、2というような区分もあるので、それぞれに対応した訓練・試験・資格があるのです」

航空会社の顔であり、最高のおもてなしを提供する接客員であると同時に、旅客の命を守る保安員でもある。大変な職業だ

Q)CAが主人公のドラマがあるけど、一番実際に近いのはどれ?

 教官曰く「上戸 彩さんが演じていた『アテンションプリーズ』が実際のCAに一番近く描かれていましたね」という。ドラマはドラマとして面白く成立させるために、かなり脚色や大げさに描かれ、現場からすると「何これ?」というものが多いなか、新人CAが訓練や乗務をこなすことで、CAとして人間として育っていくアテンションプリーズが実体に近いということだ。興味がある人はぜひご覧あれ。筆者も全話見たが、コクピットクルーもかなり正しく描かれていたし、何より面白い。

 さらに「コレはない! という点があれば教えてください」という質問に対して、教官はこう言った。「エレベーターに乗るとき上司より先に乗る際、上戸 彩さん演じるCAが『ドアいただきます』と言って上司を案内し、行き先階などを押していましたがアレはないですね(笑)。確かにビジネスマナーとして上司を案内することはありますが、ドアいただきますとは言わないですよ」

 Webページを色々当たってみると、この言葉に違和感を感じた現役CAも多いらしく、ブログなどで「アレは言わない」という記事を見かけた。どうやらJALだけでなくほかの航空会社でも言わないようなので、「ドアいただきます」は完全なフィクション兼演出であるようだ。

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