渡辺朱美氏が、レノボ・ジャパンの社長に就任して約半年が経過した。人材の多様さに驚き、ビジネスのスピード感に刺激を受けていると同氏は語る。
渡辺氏はまた、初代のThinkPadの開発にエンジニアとして携わり、IBM時代には、国内において同シリーズのマーケティングと販売の責任者を務めたこともある。
ThinkPadが20周年を迎える年に、かつていたPC業界に帰ってきた同氏の目に現在のレノボや日本のモノ作りはどう映るのか? 取材する機会を得た。
レノボは多様な人材がそろっている
── 就任後半年となりますが。この6ヵ月間いかがでしたか?
渡辺 「レノボに来て驚いたことがいくつかあります。人材が多様性に富んでいるなと。私自身、外資系のIBM出身ですが、いろいろな会社、業界を超えて経験を積んだ人々が集まり、強い組織を作っています。
もうひとつはレノボは中国の会社と思われている方もいるかもしれませんが、中国という雰囲気はなく、グローバルの企業だなと感じました。会社には中国の北京と米国のラーレイという2つの本社があって、二拠点で運営している非常に変わった形態で、グローバル企業の運用になっています。
社長になって最初に考えたのはビジネス目標とかそういうものの前に、会社そのものを元気で、みんなが楽しく感じるものにしたいと思いました。そのためにオープンなカルチャーにしていきたいと考えました。
前任者がうまくやっていたこともあり、すでにそういう雰囲気があったのですが、その上でいろいろ取り組んでいます。
ひとつは目安箱の設置で、社員の意見を直接言ってもらう。その内容はその社員にすべて回答しているし、共有しても構わないものは、毎週やっているオールハンズミーティングでお話しさせていただいています。匿名と記名が半々ぐらいですが、これによって社員とのコミュニケーションが円滑になったと感じています。それ以外にもラウンドテーブルなどを開催したりしていますね。
もうひとつ変わったこととしては、ヒーロー・オブ・ザ・ウィークという取り組みをやっていまして、社長賞と言うほど大層なものではなく、毎週毎週ちょっといい仕事をした人をセレブレートしたいと考えて、ポストカードを送ったりしています。
それに手書きで「ありがとう」というメッセージを添えて、社員のところに持っていって、一言声をかけて会話の場を作るというのをやってきました。これらを通じて、最初の半年間でやりたいと思っていたオープンなカルチャーにしたいという目標に一歩近付けたと思っていますね」
── ポストカードを集めたら何かもらえるとかあったら面白いですね。いい食事ができるとか(笑)。
渡辺 「10枚集めたらハワイにいけるとか、冗談ではよく言ってるんですが(笑)。ハワイは難しいですが、食事ぐらいならできるかもしれないですね。やらしていただきます」
── 励みになりますね。オープンでグローバルな企業というのは、以前にもお伺いしたことがありますが。
渡辺 「私の上司でジョイントベンチャーの会長であるロッド・ラピンはオーストラリア人ですし、そのさらに上の立場でアジアパシフィックを見ている人間はオランダ人です。適材適所で、出身が関係なく人材が登用するのが進んでいる企業だと思うんですね。私の下にも日本人でない社員がいっぱいいます」
── 社内のコミュニケーションはどうとられていますか?
渡辺 「大抵は日本語です。でも私の下に日本語が分からない社員は二人いますが、彼らが入るときは英語ですね。純粋培養でレノボで育った人間ではなく、他業種を含めていろいろなバックグラウンドを持つ人たちですから、色々な血が混ざることで、思い付くことの幅が広がりますね」