シリコンイメージは、モバイル機器向けケーブル規格の「MHL」に関するプレスコンファレンスを開催した。
MHL(Mobile High-Definition Link)は、モバイル機器とAV機器との間で映像&音声と電源、およびリモートコントロールプロトコル(RCP)をやりとりするためのケーブル規格。映像は非圧縮で1080/60p、音声は8chのサラウンド伝送が可能だ。
ケーブルは5ピンであることは定められているが、形状については定義されておらず、現在製品化されてい機器はスマートフォン接続側がmicroUSB形状、AV機器などと接続する側がHDMI形状になっているケースがほとんど。そしてスマホ側はmicroUSBと共用という形になっている。
MHLについてあまりよく知らない人も多いと思うが、すでに多数の対応製品が市場に出回っている。コンファレンス会場にはそんなMHL対応製品が多数並んでいた。
MHLに対応した機器とは専用のMHLケーブル(形状的にはmicroUSBとHDMIの変換ケーブル)で接続する。接続するとスマホからテレビなどのAV機器に対して映像と音声が伝送され、AV機器側からはスマホへの給電ができるほか、AV機器のリモコンでスマホの操作が行なえる。さらに、MHL対応AV機器とHDMIリンク(HDMI CEC)で接続した別の機器でスマホを操作することも可能になる。
対応するスマホは、サムスンやHTC、ファーウェイなど海外メーカーの製品が多いが、日本ではシャープの「AQUOS Phone」一部機種(NTTドコモのSH-09DやSH-10D、auのISW16SH、ソフトバンクモバイルの106SHなど)や、ソニーモバイルの「XPERIA GX」などが対応する。
AV機器側は、サムスン、LGの液晶テレビに加え、東芝の欧州向けモデルが対応。さらにシャープは国内モデルである「AQUOS K7」シリーズで対応している。
さらにAVアンプとして、オンキヨーの「TX-NR515」とパイオニアの「SC-LX56」がMHLに対応。そのほか、車載用のAVアンプやBlu-ray Discレコーダーなどでも採用製品があるという。
「MHL 2」では3D表示やキーボード入力が可能に
プレスカンファレンスでは、MHLのライセンス管理を行なっている「MHL LLC」のプレジデントであるティム・ウォン(Tim Wong)氏が登壇し、MHLを取り巻く環境などについて説明した。
MHLコンソーシアム自体は2010年に設立され、2010年6月に最初のバージョン「MHL 1」を規格化。2年の間に130団体とライセンス契約を結んでいるという。
製品自体は2011年5月から出ており、その出荷実績は昨年だけで約5000万台。今年は1億台を超える見込みだという。
MHLのメリットについて同氏はゲームを一例に挙げ、映像が非圧縮であるがゆえに遅延が少なく、スマホ自体をコントローラーにしたり、Bluetooth接続のゲームコントローラーを接続してプレイしたりと柔軟なプレイスタイルで楽しめることを説明。さらに大画面で表示することで、家族などとゲームをシェアできる点もアドバンテージだと述べた。
そんなMHLだが、今年4月に「MHL 2」規格がリリースされている。MHL 1から、より大きな電源容量のサポート(最小500mA/5V→900mA/5V)と、3D映像の伝送、RCPに対してのUnicodeキャラクター伝送の追加などがなされている。
特にUnicodeキャラクターの伝送が可能になったことで、AV機器側からのキーボード入力に対応――つまり、AV機器側の対応いかんではテレビのリモコンなどからスマホのアプリに対して文字入力が可能になる。こうなると、スマホをテレビに接続するだけで「Google TV」または「スマートテレビ」的な使い方ができそうだ。
現状はMHL 2に対応した製品は市場に出ていないが、すでにシリコンイメージがMHL 2対応チップをリリースしており、今後製品化されていくとのこと。
なお、現状のMHL対応デバイスは1080/30pまでの出力になるが、新しいチップでは1080/60p対応となる。これはシリコンイメージのMHL 1チップの性能による制約で、規格上はMHL 1でも60p対応である。