ゲームを楽しむネットカフェのPCは
3年前のスペック!?
以前より見かけなくなったネットカフェだが、数軒入ってみると昼も夜も客でごった返している。客はオンラインゲームや動画を見ているが、そのほとんどが男性だ。
利用価格はいずれも1時間4元(50円強)と安いが、これでも物価の上昇で数年前の1時間2元に比べて倍になっている。ネットカフェが実名制となった今、受付でパスポートを提示し、端末利用時に使用するIDを貰い(パスポート番号そのままの場合もある)、好きな端末の電源をつけ、教えてもらったIDでログインする。
PC本体はパーツ屋に一括発注したらしき、メーカー製ではないロゴが書かれたタワー型PCで、キーボード・有線マウスのほかにウェブカメラがモニターの上に置かれている。
本体はUSBメモリーや光学ディスク挿入を拒むため、また防犯のため、PCケースごと頑丈な金属ケースの中に入れられている。また別のネットカフェのPCは、頑丈な金属ケースの中に入れられているわけではないが、ケースに鍵がついていてやはり防犯仕様となっている。調べてみると、さまざまなメーカーが防犯に一工夫したネットカフェ専用のPCケースをリリースしている。
本体スペックは、ゲーム利用が多いネットカフェにしては低い。あるネットカフェにあったPCは、「GeForce 9600 GT」や、元「GeForce 9800 GTX+」こと「GeForce GTS 250」を採用したビデオカードを装備し、CPUは「Core2 Duo E7300」や「Athlon II X4 630」など、3年前のミドルレンジ~ローエンドパーツとなっている。
ネットカフェ同士で競争はあるが、スペックを必要とするゲームは遊ばれていないということか。確かにネットカフェで周囲を見渡せば、中華MMORPGを利用する利用客ばかりだった。
デスクトップを見てみると一見シンプル。プログラムメニューはほぼ何もなく、利用可能なソフトはネットカフェ向けのランチャーソフトを経由する。エクスプローラーで中を見たり、コントロールパネルを出したりすることはできない。
そのメニューを見ると、やはりゲームが目立つ。といっても中国のゲームだらけで、洋ゲーは「CounterStrike」や「World of Warcraft」など、随分前のゲームばかり。ハイスペックを要する洋ゲーはない。
なるほど、これはハイスペックなPCを必要としないわけだ。ランチャーソフト内にビジネスソフトもあるが「Microsoft Office」ではなく、無料の正規版がある「WPS Office」(日本ではKingsoft Officeとして展開)を採用しているのは、ソフトウェアライセンスに関する意識の変化か。
動画についても、中国のテレビドラマやハリウッド映画や日本のアニメなど豊富。日本のアニメの中には海賊版も多く含まれている。変わったところでは中国で一番検索される有名な日本人「蒼井空」(蒼井そら)のアイコンがあった。
過去に「中国人と日本のアダルトビデオの密な関係」で書いた通りなのだが、とはいえ中国でポルノは御法度。どういうことかとクリックしてみれば、動画検索サイトでこのワードを入れた結果がウェブブラウザーに表示されるのだが、その検索結果はなんともいたって健康的であった。
ゲーミングPCはニッチ化していくのか?
ポルノはさておき総括すると、もはや中国でコンシューマー向けのハイスペックなPCはゲームをするわけでもなし、動画をエンコードするわけでもなし、金稼ぎにもならない限りはニーズがあまり見あたらない。
上海を筆頭に電脳街がどんどん縮小され、代わりにスマートフォン売り場となり、人々の興味もスマホに移りゆく中で、よりニッチになりそうだ。
とはいえ、七彩虹などの中国産メーカーがハイエンドなGeForce GTX 680搭載ビデオカードもリリースしているのも確かで、決して市場がないということではなさそうだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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