最終的に90nmプロセスに微細化、というよりも90nmプロセスにあわせて再設計したと称する「Millennium P690」シリーズが登場したのは、2007年のことである。このP690でもDirectX 9への対応は見送られており、売りは性能よりも、最大でも12Wという低消費電力性になっていた。
実はMatrox、このあともP690のコアに改良を続けており、2008年に登場した「Matrox M-Series」は、ついにDirectX 9.0cに完全対応した。もっとも、完全対応といっても性能の方はお話にならないレベルで、Windows VistaなどでAeroを動かすためだけに対応したという程度でしかない。
そして同社はこのP690リリース前後から、急速にビジネス市場向け製品への傾倒を強めていく。同社の場合、比較的早くから映像コンテンツ制作分野にも注力しており、「Rainbow Runner」と呼ばれるメディアエンコードツールに力を入れたりしていた。今はこのメディアエンコード関連は、「Matrox Imaging」という事業部が引き続き製品やサービスを提供しているし、ビデオ関連製品をリリースする「Matrox Video Products Group」という事業部もある。
その一方で、引き続き「Matrox Graphics」という事業部も存続しており、M-Seriesのコアを使いながら、さまざまな製品を特定分野向けに提供している。そういう意味では、かつてNumber Nine社がやろうとして失敗したことを、Matroxは何とかやり遂げたと評価していいのかもしれない。Parhelia-512のコアは、こうしたハイエンド向け用途に要求される機能を提供するためのベースとして十分な性能があった、という言い方もできる。その意味では(現在もまだ)Matroxの中の人にとっては、Parheliaはいい製品だったのだろう。
ただ、「Parhelia-512でリテール市場のシェアを再び奪い返そう」と考えた(当時の)Matroxの中の人や、あるいはそうした製品を待ち望んでいたユーザーにとって、Parheliaシリーズは燦然たる黒歴史入りした製品と位置づけられることになると思う。
なぜ黒歴史入りしたかといえば、「コンシューマー向けには余分な機能が多すぎた」ためだろう。コンシューマー向けにはRGB各10bitの表示機能もTriple HeadもGlyph Antialiasingも必要なかったし、それよりももっとプロセスに最適化することで、高速動作できるParheliaをユーザーは望んでいた。そうしたニーズを汲みきれなかったことが、黒歴史入りの要因だったと筆者は考える。
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