「予備軍」に向けて、最初の階段を作る
―― 実は昨年驚いたのが、Twitter上で、アニメを普段あまり観ない層の人たちが「まどマギ」「タイバニ」で盛り上がっていたことだったんですね。こうした現象をどのようにとらえていますか。
丸山 これも化学反応だと思います。現場の中には予想できた人はいたんでしょうけど、僕には予想できないところでした。アニメ関係者の方からも、「まどマギはもう少しマニア受けするような作品になると思っていたら、そうじゃなかったので驚いた」みたいな話を聞きました。
―― 今は、アニメファンとアニメを観ない層では隔たりがありそうですね。
丸山 そうですね。アニメの場合、“アニメのお約束”を知らないと観てもわからないとか、マニア層とそうでない普通の人みたいな二極化が起きていますよね。それはいろんな分野で起こっていて、ゲームの世界でも、ハードなゲームユーザーと携帯ゲームしか知らない人、みたいな二極化が起きている。
―― こうしたアニメを観ない層、ライト層をどのようにとらえていますか。
丸山 アニメを観ない人たちの中には、アニメというジャンル自体に対して「食わず嫌い」な人も多いですよね。でも、この方たちは「予備軍」だと思っているんですよ。まだアニメのおいしさを知らないけど、一度ハマったら、見て下さる可能性がある人たち。この人たちにアプローチできたら、ずっと熱いアニメユーザーでいてくれる可能性が出てきますよね。
ゲームの世界で言えば、ニンテンドーDSも、最初はタッチパネルが面白くて年配の方までハマったじゃないですか。ゲームに触れるようになった人たちがDSのおかげで激増した。誰でも、好きになる過程で入門編みたいなものを通りますよね。漫画なら「少年ジャンプ」とか。どんなものでもそういう入門編があって、一歩ずつ徐々に登っていくものだと思うんです。
テレビ局としては、アニメとの出会いと、そこからさらにアニメ好きに昇っていく階段作りもやっていきたいなと思ってます。さきほどの話のように、編成で出会いの場を作るのもそうだし、アニメの場合、子どもに向けるのも大事。いきなりアニメを観せても子どもの頃から観ていなかったら観ないので。やっぱり子どもは大事にしないとだめですよね。
―― 「ガンダムAGE」もMBSですね。「子ども向けのガンダム」というコンセプトだと聞きました。
丸山 正確に言うと、「もっと子どもにも見てもらいたい」という意図かと。「ガンダムAGE」はサンライズさんが本当に挑戦されたと思います。近年の「ガンダムSEED」や「ガンダム00」で中高生以上の大人の方たちがに支持してくださった路線がもあるけど、そこだけで終わらずに、もう少し低い年齢の人でもガンダムに触れたくなる方法はないものか、っていう挑戦なんだと思います。そんなに簡単にうまくいくという保証は全くなく、新しいモノを追ったことで何かを失うという危険が往々にしてありますが、でももしかしたら入門編として子供たちにも届くんじゃないかという願いがから生まれた作品なんだと思います。
最初の入門編をいつの時代も常に再生産していかないとアニメとして先細りしてしまうという恐怖感は、いろんな人にあったりします。でも、入門編的な作品で、熱量の高いユーザーにも味が薄いなと感じられないように、かつ新しく見られる方にも入りやすいという二兎を追う作品にするというのは至難の作業だと思います。ただそれができたときには、次世代の熱量の高い、忠誠心の高いファンを生みだしていけるのかなと。
―― なるほど。
丸山 あと、アニメを普段あまり見ない方々の中にも、潜在的にアニメリテラシー力みたいなのが高い方もいて、味が濃いめで、敷居の高いアニメ作品にいきなり飛べる場合もあったりするんですよ。当時仕事で関わってないので、周囲の友人たちの雰囲気でしかないかもしれませんが、結構敷居が高そうな印象だった「新世紀エヴァンゲリオン」とかが深夜で盛り上がった時に、アニメをあんまり見てなかった新しいアニメファンが一気に増えた気がしましたし。
そういう意味で言うと、「エヴァ」ぐらいすごい作品じゃなくても、すべての作品において、日々アニメというジャンルの面白さに気づいてくれる人が少なからずいてくれるといいなと思いながらやっています。化学反応のような出会いを日々増やしたい。その出会いを担保するため、確率を上げるためには、枠の数が必要で。だから枠数や枠の種類にはこだわりがありますね。
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