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山谷剛史の「アジアIT小話」 第12回

2012年の中国コンシューマーIT業界はどうなる?

2012年01月10日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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ネットは高速化し
PCはノートへの移行が進む

ADSLに久々の大きな変化がみられそうだ

ADSLに久々の大きな変化がみられそうだ

 さて今年の中国のITトレンドはなんだろうか。

 まずはブロードバンドが速くなる。これは確実に起きる。現在ではほとんどの場所で2Mbps、速いところで4Mbpsで提供されているが、今年には6Mbps、8Mbpsが当たり前となり、10Mbps越えのサービスを提供する地域も出てくる。

 ただ、それで人々のネットの使い方が変わるかというと、ちょっと変わりそうなきっかけが思い当たらない。「以前より若干快適になる」くらいではあろうが、年末に振り返ってみれば「あぁネット環境がマシになったなあ」と言われるような気がする。

 3Gに関してはデータ通信プランが安くなれば、多くの人がスマートフォンでデータ通信を料金を気にせず使うようになり、もうちょっとネットの使い方の平均値が変わってくるだろう。

 3Gの普及とともに期待できそうなのが「位置情報サービス(LBS)」と、一度PCでの人気が下火となったSNSのスマートフォンでの利用による人気の復活だ。中国のSNSというと昨年GREEとDeNAが中国市場に参入した。これがどうなりそうかは別の機会に詳しく書いていきたい。

無線のネット環境も料金体系が改善すればいいのだが……

無線のネット環境も料金体系が改善すればいいのだが……

 現在はキャリアとの契約でスマートフォンが実質無料になっているが、これがタブレットまで広がれば面白い。中国移動、中国聯通、中国電信のうち1社でも実質無料のタブレットをリリースしたら、なし崩し的に他社も追随し、スマートフォンとまではいかないがさらなる普及が見込めるのではないだろうか。山寨機はタブレットのみ活路がある状態だが、実質無料の製品が登場することにより、スマートフォンだけでなくタブレットも淘汰される。

 PC系ではデスクトップPCユーザーがますますノートPCに移行する以外は大きな変化はないだろう。中国においてSandy BridgeのノートPCが国慶節商戦以降、そこそこ話題となったのは4000元、3500元というお買い得価格が要因であり、スペックは二の次であった。

 次なるIvy BridgeのノートPCが話題になるかどうかも、今年の10月の国慶節か12月以降のクリスマス~旧正月で主要ベンダーがキリのいい3000元(約3万6000円)で出せるかどうかにかかっているが、GPUが強化されるのでデスクトップPCでオンラインゲームをやっていたユーザーがノートPCに鞍替えするかもしれない。

 それに対してWindows 8はPC買い換えや買い足しの起爆剤になるとは考えづらい。Windows XPの時代にPCが本格普及した中国は、今も最もWindows XP(の海賊版)が使われる国となっている。

 例えば調査会社IDCの調査では、昨年8月の時点でWindows 7の利用者の割合は世界平均を大きく下回る13.6%しかなかった。海賊版天国と揶揄されがちな中国だが、無料だからといってユーザーは新しいソフトウェアには意外に飛びつかないのだ。むしろ既存のノートPCユーザーが買い換え、買い足しをするならば、経済が上向きである限り、メンツを満たす新アイテムであるMacに移行していくと思われる。

中国でネットテレビがヒットする!?

ゲームアプリが遊べるテレビは地場メーカー各社がプッシュ

ゲームアプリが遊べるテレビは地場メーカー各社がプッシュ

 PCまわり以外に目をやれば、中国地場メーカーが力を入れているAndroid搭載テレビはヒットの可能性を秘めている。昨年はAndroid搭載スマートフォンやタブレットを「AngryBirds」や「Zombies vs Plants」といったゲームが牽引した。

中国ではガジェットでゲームや動画視聴ばかりする人が多数派を占める

中国ではガジェットでゲームや動画視聴ばかりする人が多数派を占める

 中国で人気のゲームアプリのひとつ「FRUIT NINJA」は全ダウンロードの30%が中国からであり、中国市場で年600万ドルを売り上げた。ここ数年でおきた「家族でのテレビ視聴離れ」と「パソコンでの動画サイトでの個人視聴」の逆風の中、人気コンテンツであるゲームアプリを媒介に大家族でわいわい楽しみたいと思う人々がどれだけいるかがカギになる。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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