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Winny開発者・金子 勇氏、担当弁護士 壇 俊光氏に聞く

逮捕から8年、やっと“一歩前進”――「Winny」無罪確定で

2011年12月23日 12時00分更新

文● 盛田 諒/ASCII.jp編集部

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架空の“47氏”が訴えられた冤罪事件

―― 今回の事件は京都府警による冤罪事件なわけですよね。誤認逮捕が起きたきっかけになったのはどこだったんですか?

 警察の大失敗は、2ちゃんねるの書き込みをちゃんと確認してなかったことなんです。起訴してからですよ、証拠の収集をはじめたのは。

―― 書き込みを確認していなかったというと。

 逮捕したときの報道は「金子さんは2ちゃんねるを通じて著作権制度を崩壊させるために、著作権侵害にWinnyを使用しろと奨励していた」となっていたんですけど、実際は逆で、「悪いことはするな」と書いていたんですよ、金子さんは。

金子 こちらは問題が起きてるならどうにかした方がいいんじゃないですかってことでいろいろ(調書を)書いたら、「ヤツはこういう思想のもとに~」と言われて、「はあ、そうですか」と。「せっかく考えてあげてるのに……」みたいな。

当時、金子さんが書きこんでいた2ちゃんねる「ダウンロード板」。2ちゃんねるでは「47氏」と呼ばれていた

―― 「アインシュタインが原子爆弾を作れと言った」みたいな話ですね。

 なので、検察側は「金子さんが著作権侵害目的でWinnyを作った」と主張してたんですが、そこを立証しようとしても全部コケたんですよ。検察というのは恐ろしい制度で、一度起訴したら意地でも有罪に持ち込もうと、あり得ないストーリーを作ってくる。

金子 彼らも思いこみで動いてるんですよ。

 本当ならガサとか逮捕とかじゃなく「作らないで」とか「作るときは相談して」とかでもよかったわけです。彼は別に「神と崇められたいがために、著作権制度の崩壊をもくろむマッドサイエンティスト」じゃなかったわけですから。

金子 彼ら(警察側)も2ちゃんねらーみたいなものなんですよ。Winnyの開発中、課金モデルのことを言い出したら、2ちゃんねるで「ヤツは偽物に違いない」「ヤツは“47氏”じゃない」と言われたことがあったんですよ。みんなが考える「47氏」は、私とはまた別の“天才的なハッカー”なんです。なんか架空の人格つくられてんなー、と思ってましたけど。そういう仮想人格で、47氏を仮定しちゃダメなんです。みんながそれに巻き込まれたんですよ。

 「こいつら文句ばっかり言いやがって、挙句の果てにガサまで入れてきやがって」って感じかな?

金子 いや、そう思ったら負けなんですよ。なんで俺はこんなことをやってるんだ、と思ったらフリーウェア作者としては終わりですので。

金子さんは個人のフリーウェア作者として、昔ながらのHTMLで書かれたWebサイトも持っている

―― フリーウェア作者は何もかも無償で提供して、ユーザーからの要望に答えてバージョンアップもかけてるわけですからね。

金子 本当はWinnyも動いている限りはバージョンアップしなきゃダメなんです。でも、警察からすればアップデートは“再犯行為”なので。

 情報漏えいとかがあっても、情報漏えいのところだけ対策したら「情報漏えいをなくして使いやすくし、著作権侵害を幇助した」と言われるわけですからね。

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