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アップル フィル・シラー上級副社長インタビュー

なぜ「iOS」機器だけが、人々の暮らしに変化をもたらすのか?

2011年12月08日 12時00分更新

文● 林 信行

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アプリ開発者とユーザーをつなぐ橋渡し役、「AppStore」

 一体、今、なぜこうした変化が起き始めたのだろう。

 「注目してほしいのは、これらの製品が人々の生活に非常に速いペースで浸透しているということだ。その速さはパソコンが広まったときのスピードとは比較にならない。その上これらの機器は、ユーザーが1日中身近に置いて使う、非常に接触時間が長い製品であるという点も忘れてはならない。

 だからこそ、これらの製品にはテレビの代わり、本の代わり、そしてゲーム機の代わりにも使われる。多くの開発者が、あまたのユーザーの多様なニーズに応えるべくアプリを50万本近く取り揃え始める。同時にそれに応えるように、ユーザーがそれらのアプリを購入する。こうした流れで、iOS機器は、人々の暮らしのさまざまな側面で面白い活用を生み出していっている。日本の人々は、その特質を非常によく理解していると思う」。

 それでは、こうしたアプリケーションはどうしてパソコンでは登場しえなかったのか。

 「これは、AppStoreというビジネスモデルによる部分が大きいと思う。パソコンというと、まずはパソコン用のOSというものがあって、その上で電子メールやウェブブラウザー、インスタントメッセンジャーといったお決まりのソフトを切り替えながら動かしているという感触が強く、なかなか新しいアプリケーションに手を伸ばそう、という感覚も芽生えてこなかった。

 企業内でどのようなソフトを使うか選ぶのはIT部門の人、自宅でどのソフトを使うべきかを勧めてくれるのはパソコンコーナーの店員さんで、しかもたいてい勧められるのはマイクロソフトやアドビといった大手のソフトだけで、種類も少なく、そこで出てくる提案も限られていた。

 iOS機器では状況はかなり変わる。そもそもiOS機器では、起動中のアプリが画面全体を覆い、専用機のようにして使えるという点も大きい。

 しかし、何といっても重要なのはAppStoreの存在だ。AppStoreでは開発者とユーザーの距離がグっと近くなり、アプリごとの説明画面は、ユーザーに対して『iOS機器でこんなこともできる』と提案する形態になっている。しかも、小規模な開発者でもユーザーに対して直接アピールできる。これによって、面白いアプリの提案が、より早く、そしてより広く採用されることが可能になったと思う。

 それに気がついた何千何万という開発者たちが、生活のあらゆるニーズに応えるiOS用アプリケーションを次々と生み出す。同時にユーザーは、自分の手に握りしめたiOS機器のAppStoreで『こんなアプリケーションはないか』と検索してアプリを発見し、使うことで循環を生み出し、どんどんと新しい活用が広がってきている。これは凄いことだと思う」。


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