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ARM TechCon 2011レポート Vol.1

省電力型と性能追求型、2つのコアでスマホを進化させるARM

2011年10月29日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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スマホのCPUコアを開発するARM
次世代コアは省電力型と性能追求型の2つ

 ARM社は19日に「Cortex-A7」プロセッサーと「big.LITTLE Processing」を発表した。このうちCortex-A7は、簡易なパイプラインを採用し、電力効率を高めたプロセッサーだ。

Cortex-A7は、番号は下になるが、Cortex-A8よりも設計が新しく、最新のプロセスを使い、かつ高速な内部バスが利用できるため、処理性能は高い。しかし消費電力では、Cortex-A5並だという

 Cortex-A7は最高性能という点では決して高いものではない。名前も“A7”と、iPhone 4でも用いられるなど、2010年までのスマートフォンで主流のコアだったCortex-A8からは、一世代前に戻ったように見えるが、実は話はそう単純ではない。

 たとえば45nmプロセス以前に設計されたCortex-A8はクロック周波数が1GHz止まりだったが、28nmプロセスで製造したCortex-A7は1GHz以上のクロック周波数が利用可能で、かつ同じクロック周波数であればCortex-A7のほうが性能は高い。つまり単体でも低価格スマートフォンに利用できる性能を持つのだ。

 Cortex-A7が電力消費あたりの性能を高めた省電力型とすると、最高性能を追求したCortex-Aシリーズの最上位には「Cortex-A15」プロセッサーがあり、こちらはアウトオブオーダー機構などを採用する高性能タイプだ。

 しかし、プロセッサー性能が高くなると、その分消費電力が増えてしまう。クロック周波数や電源電圧を下げることで、ある程度消費電力を減らすことはできるが、回路規模の小さなプロセッサーと比べると消費電力は増えてしまう。また不要な回路の電源やクロック供給を落とす技術はあるものの、これはアイドル時の消費電力を減らすもので、動作時の消費電力を大きく削減するものではない。

 そこでARM社は、高性能が必要なときにはCortex-A15を、負荷が低いときにはCortex-A7へと切り替えることで、プロセッサーの消費電力を大きく下げるテクノロジーを発表した。これがbig.LITTLE Processingというわけだ。

性質の違う2つのコアを切り替えて使うことで
バッテリー駆動時間を延ばす

 big.LITTLE Processingには「big.LITTLE Task Migration」と「big.LITTLE MP」の2つの種類があり、前者は仮想化機能を使いて内部ステートを保存し、プロセッサーを切り替えた後、他方へ内部ステートを読み込んで電力効率の違うプロセッサーを利用する技術だ。もう1つのMPはOSのスケジューラーに手を加え、Cortex-A15とCortex-A7で適切なほうにタスクを割り当てる。負荷の低い処理は電力効率の高いCortex-A7で、処理性能が要求されるスレッドはCortex-A15で実行するわけだ。

big.LITTLE Processingには2種類の実装があり、1つはCortex-A15とCortex-A7を切り替えて利用する「Task Migration」。もう1つは、スレッドを実行するプロセッサーを使い分ける「MP」である

 Cortex-A15は、2012年あたりから登場するとされており、この世代のシステムでは、big.LITTLE Processingにより、バッテリー寿命が伸びることが予想される。ARMによればCortex-A15単体で構成した場合に比べ、big.LITTLE Processingを採用すると1.7倍程度、バッテリー寿命が延びるとしている。

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