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最新スマホも続々登場! Mobile World Congress 2013レポ 第22回

スマートフォンの性能は今後も確実に向上 ARM社に聞く

2013年03月05日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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 ARM社はMWC2013でプレス向けの説明会を開催した。説明を行なったのは、同社Director Segment Marketing Client ComputingのJeff Chu氏。これまでの状況を説明したあと質問に答えた。

説明に対応したARM社Director Segment Marketing Client ComputingのJeff Chu氏

2年前のハイエンドの性能が今年のエントリー機に
確実に進化を進めるARMコアのプロセッサ

 まず、2012年の状況については、Cotex-A15やA9クアッドコア搭載製品の出荷が行われた一方で、Cortex-A5を使った50ドルのスマートフォンやCortex-A9クアッドコア搭載で150ドルの端末などが登場した。また、低価格端末向けの省電力タイプであるCortex-A7も採用があったことなどを説明した。

 2012年のMWCでSoCベンダーの多くは、低価格のスマートフォンに注目していたのだが、それが具体化したようだ。ハイエンドのスマートフォンはすでに普及し、低価格の製品がその裾野を広げるといった感じだ。今年も低価格の機器に注目するSoCベンダーは多く、新興市場などに多く登場することになるだろう。

 これに対してARMは、2013年にはエントリーレベルの製品でクアッドコアを搭載し100ドル程度のスマートフォンやタブレットが登場するだろうと予測した。その背景には、すでに2010年から7億5000万台のスマートフォンやタブレットが市場に登場しており、先進国には十分普及が進んでいること、3GモデムのSoCへの統合が進んだほか、ファウンダリーの40nmローパワーの製造ラインが最適化されてきたこと、ライセンス料の不要なAndroidやFirefox OSなどの登場で、システムのコストが下がってきていることなどを理由に挙げた。

2013年には、Cortex-A9クワッドコアクラスの製品が100ドルで入手できるようになるという

 その実例として、2011年のメインストリームは、40nmプロセスで1GHzのCortex-A9プロセッサだったのに対し、今年2013年の端末に搭載される28nmプロセスのCotex-A7プロセッサ(1GHz)は、わずか0.45平方ミリで、コア部分のフットプリントは1/5になり、消費電力は1/3になった。なのに性能は変わらない。

2011年から2013年で、性能は同じで、コア面積は1/5に、消費電力は1/3になった

 つまり、SoCのコストを大きく下げることが可能になったため、エントリーレベルの低価格製品は2年前のハイエンドクラスの性能を持つ可能になったという。消費電力が減れば、バッテリー容量を減らすことができ、さらに筐体なども小型化できる。逆に筐体に余裕があれば、コストのかかる高度な実装技術も必要ない。

 今後の方向性だが、ARMプロセッサは、モバイルコンピューティングの限界を広げる方向になるという。グラフィックスの性能なども向上しつつあり、マルチタスクだけでなく、マルチウインドウも可能になる。実際、ARMプロセッサを用いるWindows RTはマルチウインドウのデスクトップが利用できる。ビデオやイメージの加工やレンダリングなどもSoCに内蔵したビデオプロセッサで可能になり、たとえば、リアルタイムの顔認識も可能になる。また、ジェスチャー、自然言語の認識も可能になるだろうと予測した。

ARMプロセッサは、モバイルコンピューティングの境界を押し上げるという。これにより、従来のPCで可能だったこともできるようになる

 最後に最新のハイエンドプロセッサCortex-A15について説明した。A15は2013年のハイエンドデバイスであるとした。最初の世代のCortex-A9の2倍の性能があり、クアッドコアのA15プロセッサは、ラップトップ並の性能をモバイルデバイスの消費電力で可能であるとした。

Cortex-A15は、すでにBroadcom、Hisilicon、LG、nVIDIA、Renesas、ST-Ericsson、Samsungがライセンスを受けているという。ARM社のMaliグラフィックスは、広い範囲の製品に利用可能で、高解像度のサポートや、汎用演算(GPGPU)が可能だが、50ドル程度の安価な製品にも応用可能

2013年には、ARMの提唱する低消費電力化技術big.LITTLEが出荷される。また、28nmプロセスの製品が市場に登場、20nmのサンプリングも開始されるという

同じCortex-A9でもリビジョン違いで性能も変わっている

 さて、Cortex-A9に関しては、NVIDIAはTegra 4iに搭載したCortex-A9はR4であり、他のA9よりも改良され(TBLが増えているなど)、高速であるとしている。これまで、ARMのプロセッサに関しては、設計のリビジョンなどは表だって論じられることはあまりなかったが、このような改良が行なわれているとすると、同クロックのA9でも、性能差が出てくる可能性がある。この点についてChu氏に聞いてみた。

 まず、プロセッサの基本デザインは同じでも、製造プロセスが違えば、それに合わせて、回路を変更することは常に行われている。ARM社は設計データとして、論理的な設計である「ソフトマクロ」や製造にすぐ利用できるパターンデータである「ハードマクロ」の両方を出荷している。多くの場合、ファブレス企業が利用する製造メーカーが、自社プロセスに合わせて、これを改良、顧客からCortexプロセッサを含むSoCを受注できるようにする。この段階で、さまざまなフィードバックがあり、これを設計側に反映させることがあるとのことだ。

 また、プロセッサのデザインは複雑で、実際に市場に出してから問題を発見することもあるという。多くは、致命的でないものだが、中には性能に関するものもあるという。このため、設計についても、一回やったら終わりではなく、常に改良が続けられているという。このため、細かいところまでみれば、さまざまなリビジョンのCortexプロセッサが各社のSoCに搭載されているという。また、同一メーカーでも、あとから改良を反映させるということもあるという。つまり、Cortex-A9 R4は、特別なものでなく、改良され続けているCortex-A9の1つにすぎないのだという。


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