中国と同じくインドでもITの利用スタイルが変わる!?
「インドに激安タブレット有り!」を示したアーカシュ。インドのタブレット事情を紐解くと、インド初のタブレットは昨年7月の「Olivepad」なるモデルだ。
それから同年10月にサムスン電子の「GALAXY Tab」が、今年1月にAppleの「iPad」がそれぞれ上陸した。
また、インドのネットユーザーはFacebookを筆頭に、アメリカのサービスを積極的に利用するため、ソーシャルサイトを利用する際文字入力がしやすいRIMの「BlackBerry」は人気。その影響で今年6月のRIMのタブレット「BlackBerry PlayBook」登場もインドのIT系メディアでしばしば報じられた。
インドの調査会社「CyberMedia Research」によれば、昨年10月から6月までの9ヵ月の間に10のメーカーから27のモデルが発売され、15万8000台が売れたという。メーカー別シェアではサムスン(45.8%)がもっとも高く、続いて発売日が遅かったにもかかわらずRIM(21%)が2番手になった。その後にApple(18.4%)、その他(14.8%)と続く。また3G内蔵モデルと、Wi-Fiのみのモデルの比率は7:3であった。
この「9ヵ月で15万8000台」という数字だが、インドのPC市場は四半期(3ヵ月)で244万台となっているわけで、いきなりインドでタブレットがメジャーの地位に躍り出るとは考えにくい。
街中でタブレットが売られているのを見ることは少なく、インドの地場の人気携帯電話メーカー「Spice」をはじめとしたメーカーサイトではタブレットはリリースされていないしリリース予定もない。ただし、地場の人気PCメーカー「HCL」のサイトを見ると「HCL ME Tablet」なる製品を販売しはじめている。
今のところIT大国といわれるインドでPCユーザーないしインターネットユーザーは、英語が使えるインテリがほとんどだ。多くのインドの地場ポータルサイトがインテリ層向けに英語で記載されていて、ニュースのコメント欄にはインド人ユーザーによる英語の感想コメントが並ぶ。インドは12億人の人口を抱えるが、そのうちの1億人弱がPCやインターネットを利用しているに過ぎない。
中国では、今でこそ地場のサービスでユーザーを囲み情報統制をしているが、地場のサービスがまだ充実していない2000年代前半の中国インターネット黎明期には、現在の1~2割程度に相当する数千万人しかいなかった中国のインターネットユーザーが、当たり前のように「Google」や「Hotmail」や「eBay」を利用していた。
インドと中国では情報統制や政治システムで随分と異なろうが、中国のインターネット黎明期と現在とを比較してもまったく利用実態が変わるように、インドも今の「英語話者によるPC+アメリカ発ネットサービス」の利用スタイルから、「ヒンディー語話者によるタブレット+インド産地場サービス&アプリ」に変わっていくかもしれない。そのきっかけがアーカシュなのかもしれない。
そんなわけで、アーカシュが今後どれくらい普及していくか見守っていき、面白い動向があればまた紹介していきたいと思う。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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