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同容量で高いパフォーマンスを1/3のコスト、1/4の消費電力で実現

自動階層化が進化!オラクル、ZFS Storage Applianceを投入

2011年08月30日 12時50分更新

文● 渡邊利和

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8月29日、日本オラクルは同社のストレージ製品に関する説明会を開催し、特に非構造化データ向けNASストレージである「ZFS Storage Appliance」とテープライブラリ製品群に焦点を当てた説明を行なった。

アプリケーションの視点からストレージを最適化

 まず概要説明を行なった同社の執行役員 システム事業統括の野々上 仁氏は、同社のストレージ製品の3つの取り組みとして、「ソフトとハード一体開発による超高性能マシン“Engineered Systems”」「オープンでベストなコンポーネントへ投資強化“Compute, Storage, Network Building Blocks”」「アプリケーションに最適化された検証済み構成“Optimized Solutions”」が並列的に存在することを紹介した。

 

同社の執行役員 システム事業統括の野々上 仁氏

 同社の強みがもっとも端的に表われているのが垂直統合型モデルでもあるEngineered Systemsなのだが、一方でこれは「オラクル製品のみでシステム構成する」囲い込み戦略とも見える。この点について同氏は他社製品との組み合わせを前提とする「オープンシステム」に関する取り組みがなくなったわけではないことを強調し、他社製品と組み合わせて利用しても高性能かつコスト面でも優位性があるハードウェアコンポーネントとしてのストレージ製品の提供が継続されるとした。

 

 その上で、やはり同社の強みはハードウェアからアプリケーションまでの全レイヤに渡る製品群を擁していることだとし、この強みを「アプリケーションがどのように動作するか、中身を理解した上でハードウェアを最適化できる」ことだと表現した。

 

オラクルストレージの3つの取り組み

 同社のストレージ製品群は、旧サンの独自開発によるもの、旧サンが買収したストレージテックのテープライブラリ製品、オラクルによるサン買収によって実現したEngineered SystemsとしてのExadata/ExaLogicに続き、米国で6月末に発表されたピラーデータシステムズ(Pillar Data Systems)の買収によって獲得されたSANストレージ製品群の4本柱で構成されることになった。同社の買収により、製品ラインナップとしてはストレージ専業ベンダーに匹敵する幅の広さを獲得したことになる。

 

ストレージ専業ベンダーに匹敵するポートフォリオ

ハイブリッドストレージプールの強み

 ExadataはOracleデータベースとストレージの組み合わせで、構造化データの格納に対応するのに対し、現在はNASストレージと位置づけられる旧サン由来のZFS Storage Applianceは非構造化データに対応するストレージとして、現在注目を集めるクラウドストレージを実現するための製品群と位置づけられる。

 

 ZFS Storage Applianceの特徴は、Solarisのための次世代ファイルシステムとして開発されたZFSの機能を活用している点だ。ZFSでは、最大プールサイズ(ボリュームサイズのことと考えて良い)が2億5600万PBという巨大なストレージを実現できるファイルシステムで、「旧式化したUFS(UNIX File System)のしがらみを互換性も含めてすべて捨ててゼロベースで新規開発したファイルシステム」だ。

 

ZFS Storage Applianceの特徴

 製品の説明を行なった同社のシステム事業統括 ビジネス推進本部 プリンシパル・セールス・コンサルタントの寺島 義人氏は、ZFS Storage Applianceの強みとしてこの大容量を挙げ、「他社製品であれば複数のボリュームに分割せざるを得ず、結果として運用管理コストが上昇してしまうのを回避できる」という。

 

システム事業統括 ビジネス推進本部 プリンシパル・セールス・コンサルタントの寺島 義人氏

 また、もう1つの特徴として挙げられたのが、同社が「ハイブリッドストレージプール」と呼ぶ、いわゆる自動階層化機能だ。ZFS Storage Applianceでは、DRAMによる1次キャッシュ、SSDによる読み込み/書き込みキャッシュ、HDDの3段階のストレージ階層をシステム側が自動的に最適利用する。

 

 これをうまく活かすと、従来ならコストが高価になることを前提に導入していた高速なオンラインストレージをより安価に、かつ運用中の電力消費量も削減した形で実現できるという。同氏が具体例として挙げたのは、容量30TBの構成の例だ。

 

 従来型のストレージは、高速な1万5000回転のHDD(500GB)×60本の構成、ZFS Storage Applianceは2台のSSDドライブと、7200回転/1TBのHDD×30本で構成し、両者を比較して見せた。7200回転/1TBのHDDは、現在ではPCでも搭載されているレベルのスペックであり、価格は安価なことから、システム価格では従来型のストレージが26万ドルに対してZFS Storage Applianceなら6万3,000ドルと約1/3のコストで同容量を実現できるという。

 

従来型のストレージとZFS Storage Applianceの比較例。1/3のコストで、1/4の消費電力

 しかも、このシステムのI/O性能を比較すると、従来型ストレージが30K IOPSに対してZFS Storage Applianceは40K IOPSとなっており、安価で低速なHDDを採用したにもかかわらずむしろ高性能となっている。もちろんこれは、SSDによる自動階層化の恩恵だ。そして、ドライブの数が半分になっていることで運用に必要な消費電力量は従来型ストレージの1750Wに対して392Wと1/4以下に抑えられるという。安価で大容量のデータのアーカイブに関しては、さらに旧ストレージテックのテープライブラリ製品群があり、これも組み合わせて4階層のストレージシステムを構築すれば、そのコストメリットはさらに拡がることになる。

 

テープストレージまで加えた4階層ストレージのアドバンテージ

 なお、野々上氏は10月に米サンフランシスコで開催予定のOracle Open Worldでストレージの新世代製品が発表される予定であることを明かし、“Super Cluster”として開発表明が行なわれている製品もここで発表される予定だという。

 

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