メモリー搭載量の多さは作業の快適性に直結
以下、ThinkStation C20がどれだけの性能を発揮するかを見ていこう。数値はエントリークラスのワークステーション「ThinkStation E20」と比較できるものとなっているが、それぞれのスペックは下記の通りだ。
表 マシン構成 | ||
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項目 | ThinkStation C20 | ThinkStation E20 |
CPU | Xeon 5675(3.06GHz) | Xeon 3474(2.93GHz) |
コア数 | 12コア(2CPU) | 4コア(1CPU) |
メモリー | 48GB | 16GB |
ビデオカード | Quadro 5000 | Quadro FX1800 |
HDD | 1TB (SATA) | 250GB(SATA) |
検証ソフト | Adobe After Effect CS5.5 |
テストは動画編集の現場で多用される下記の5つの内容に沿って検討されている。
- RAMプレビュー
- マルチプロセス検証
- グリーンバック合成検証
- 連番ファイルを使用した色補正検証
- Open GL性能の検証
まずはRAMプレビューだが、これはメモリー搭載量の多寡がどれだけ動画編集の快適さに影響するかを見るためのテストである。具体的には2K品質の実写映像(2048×1024ドット)を利用し、RadOne RAW(R3D形式)でどの程度の長さまでプレビューできるかを計測したもの。
動画編集時にレンダリングせずに編集結果を確認できるかというニーズを想定したもの。2K品質ともなると、データ容量も膨大となるため、6~8GB程度のメモリーを搭載した、一般的なワークステーションでは数十秒で、再生がつかえてしまう。長尺の再生ができるかは、作業効率に直結するだろう。
今回のテストでは1199フレーム(49秒超)の動画データを利用している。C20がすべてを実時間でプレビューできたのに対して、16GBメモリー搭載のE20で再生できたのは727フレームと全体の60%ほどだった。テストを実施した動画制作会社の説明では、制作現場では依然として32bitが主流とのことだが、64bit化+大容量メモリーの搭載が今後生きてくるのは間違いない。
マルチコアの威力を実感できる高速なレンダリング処理
次にマルチプロセス検証だが、これはフルHD(1920×1080ドット)の映像(Apple ProRes HQ形式)に、タイムリマップ処理(スローモーションなど再生速度の変更)や負荷の高いグレインフィルター(フィルムのザラツキを付加する処理)などを付加。ファイルが出力されるまでの処理時間を見るもの。C20ではCPU1つに対して3GBのメモリーを割り当てる。
負荷分散がしっかり機能していれば、コア数に応じた効果が得られる。元動画のサイズは3秒ほどだ。
テストではE20の126秒に対して、C20は20秒程度と1/6以下の時間で処理が済んだ。レンダリング時間は作業時間=コストに直結する部分なので、制作時間の短縮やクオリティーの改善に大きく寄与しそうだ。
3番目のグリーンバック合成は、映像制作で多用されているグリーンバック合成に関するテスト。別撮りした人物と背景をパソコン上で合成して、ロケ時間を短縮したり、実際には撮れない映像を作り出したりする。ここでは人物2名(モデルは同一人物)と背景の合計3種の映像を1連の動画として合成した。合成にはサードパーティー製のプラグインソフト「KeyLight」を使用している。
元素材の動画は3秒ほどの尺で、サイズはフルHD。髪のディティール感などが損なわれないように、細かなマスク処理を活用。さらに色調整やシャドー部分の調整なども実施する。プロが制作するうえで妥協しないクオリティーを追求した。結果はE20の8分25秒に対して、C20は3分23秒と1/2.5の時間短縮となった。利用頻度の高いポピュラーな処理なので、これも作業時間や制作コストに直結する効果が得られそうだ。