人によるかもしれないが、筆者は今の梅雨の季節が1年を通じて最も嫌いな季節だ。エアコンを遠慮なく使える社会情勢ならまだしも、首都東京は、大地震による原発の事故の影響で、過去にないほどの節電対策が必要な状況だ。
大自然や地球は、今はたまたま地球を支配下に置いている人類のことや、発電のトラブル等には関係なしに、今から何十日間は雨の多い蒸し暑い日が続く。たまに降る少しの雨なら、小さな折りたたみ傘さえあれば、通勤の持ち物のスタイルが大きく変化することはないだろう。ただ来る日も来る日も多量の雨が続けば、持ち物を減らすとか、もしくは変えるとかを考えるのは普通の対策だ。
そんな雨の多い日本の季節に最適な「フライターグ」と呼ばれる鞄がある。スイスのチューリッヒに住む、兄のマーカス・フライターグと弟のダニエル・フライターグの兄弟が、自分たちのために作ったプロダクトだ。
当時、2人はドイツのハンブルグとイタリアのパレルモを結ぶインターナショナルな幹線道路に面したアパートに住んでいた、自転車大好きなデザイナーだった。ある日、アパートの目の前を通り過ぎる排気ガスで汚れた貨物用大型トラックの「トラックタープ」(幌)に眼が釘付けになり、運送会社名やプロダクト名が大きく描かれた個性的な幌を使って、ユニークで雨にも強い丈夫なバッグが造れればどんなにいいだろうと考えた。
早速、マーカスが自転車で近所の工場から不要になった貨物用大型トラックの幌を入手、バスタブでゴシゴシと洗浄し、適当にカットして世界初のフライターグの原型ができ上がった。今や世界中のヒット商品となったフライターグには多くの種類があるが、筆者が衝動買いした「F77 BEN」 と呼ばれる商品は、少し大きなサイズのブリーフケースだ。
ほかのフライターグと同じく、本体は貨物用トラックのタフな幌を使い、握り手とショルダーストラップは自動車のシートベルトを利用した100%再生素材を活用した商品だ。極めて丈夫な素材なので、少し重さはあるが、雨にも摩擦にも強い素材はあらゆるモノを外界から守るのに適している。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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