省電力CPUが変えた、スレートPCのあり方
古くからPCになじんできた読者であれば、マイクロソフトがタブレットに対して根気強く取り組んできたことを知っているだろう。
1990年代初め(約20年前)には、すでにWindows 3.1をベースとしたWindows for Pen Computingがリリースされていた。その後はWindows XPをベースにしたWindows XP Tablet PC Editionが登場。Windows Vista以降では、上位エディションの標準機能として、タブレット機能をサポートしている。
しかしこうした取り組みとは対照的に、タブレット機能を備えたパソコンの普及はあまり進まなかった。企業での一括導入などいくつかの事例は存在するものの、有効活用できるシチュエーションは限られてきた。少なくとも以下のような課題があったと思う。
- WindowsのUIをタッチだけで操作するのに無理があった
- パソコンの消費電力が高く、利用時間に制限
- 重量などの面で、携帯性に制約
- ノートの上級機という位置付けで、比較的高価
例えば操作性に関しては、キーボードとマウスでの使用を前提としたWindowsのUIでは、すべてをペンまたは指先の操作でまかなうことは難しい。仮にウェブサイトなどのブラウズを中心に機能を絞りこんだとしても、URLや検索キーワードの入力、ネットワーク設定などキーボードが必要なシチュエーションが数多くあるためだ。
また、「PCと同じ」という特徴も少し前(例えばWindows XPが登場した当時)を振り返ると難しい面があったように思える。当時のノートパソコンは今よりもずっと高価だったし、バッテリー寿命も1日充電せずに使うには足りなかった。特にキーボードも備えたコンバーチブル型の製品では、タブレットとディスプレーの回転機構だけ余計に重量が増す。少なくとも手でもって操作するには重く、数万円のプラスに見合ったタブレットの付加要素も見出しにくい面があったと思う。
しかし、ノートパソコンの低価格化や省電力CPUの登場はこうした状況を変えつつある。特にフル機能のWindows 7を動作させるのに十分な性能を持ちつつ低消費電力なCPU(例えばOak Trailと呼ばれるAtomプロセッサーやFusion APUなど)が登場したことは、タブレットPCに対しても追い風となるだろう。
例えば富士通が2月に発表した製品(STYLISTIC Q550)は、10.1型WXGA(1280×800ドット)のディスプレーを搭載しながら、標準バッテリー使用時で690gと軽量。iPad2は601gなので大きくは変わらない。大容量バッテリー(+150g)に変更すれば約3.2時間から約10時間に駆動時間を延ばせる。OSはフル機能のWindows 7 Professionalで、ドメイン参加やリモートデスクトップといった企業利用にも適する。iPadなどにはない指紋認証やTPM、スマートカードスロットなどセキュリティー機能も豊富だ。
同様に個人向けに販売されている、エイサー、オンキヨー、ASUSなどの製品も1kg以下の重量でWXGAクラスの解像度を実現している。